―2024年は畜産業界にとってどのような一年でしたか。
年間を通じて円安で、食品が値上がりし、高級感がある牛肉の消費量は落ちました。子牛の価格は一時下がっていましたが、回復してきました。飼料価格は高止まりし、九州を中心に和牛の繁殖農家の廃業が増えています。乳価を上げたら牛乳を飲まなくなるなど、少子化の影響も影を落としています。業界全体でしばらくは体力勝負が続きそうです。

―益田市や浜田市、山口県萩市の拠点で肥育や酪農、繁殖を一貫して手が掛け、強みとなっていますね。
25年1月末時点で、四つの牧場で約1万2千頭の和牛や乳牛を飼育しています。肉牛は年間で4200頭、牛乳は1日65㌧を出荷しています。酪農は子牛の生産手段として20年ほど前に子牛価格が高騰している時代にスタートし、自給率を上げることに取り組みました。現在では母牛を飼育して子牛を産ませ、子牛を肥育するところまで自社内で完結できる体制を構築しています。


―食品残渣(ざんさ)の飼料化にもかねて取り組んでいます。
四つの牧場に計10人の獣医がいることが強みです。食品残渣はミカンの搾り絞りかすやバナナ、酒かす、ビールかすなどを原料に、飼料化プラントで1カ月間の嫌気性発酵を経て安定した餌として牛に与えており、獣医が栄養を計算して献立を作っています。また、ソーラーパネルを導入し、地球環境に優しい再生可能エネルギーの生産にも積極的です。

―益田商工会議所の会頭として地場の経済活性化への思いを聞かせてください。
1日2往復運航の延長が決まった萩・石見空港の利用促進に引き続き力を入れ、インバウンド(訪日客)とアウトバウンド(日本人客)の両面から市と共に対策を進めます。東京益田会への働きかけとともに、経済交流の交流協定書を締結している神奈川県の川崎商工会議所との連携強化にも引き続き取り組みます。商工会議所の青年部や女性部、委員会単位での行き来も盛んになると考えています。

 

生命誕生から出産、哺育、育成、肥育と大きく成長し美味しい牛肉となって消費者に食べていただく生命総合産業です。牛とともに自然の中でのびのび仕事がしたい    協調性のある人を求めています。

松永和平=島根県益田市出身(70歳)1973年牧場経営を始める。                            
浜田商業を卒業後、大阪の銀行につとめるが都会になじめず3ヶ月で地方に帰り、松永牧場を設立。現在肉牛の萩牧場、酪農のメイプル牧場、浜田メイプル牧場の4牧場を経営。