短歌 宮里勝子選

職人の腰のバンドゆのぞきたる工具の握り部黒き艶もつ      雲 南 多田納 力

 【評】工事現場でのひとこまか、工具の握り柄が埃(ほこり)と汗で黒光りしている熟練工に思いをはせる。腰のバンドからのぞく様子が具体的で無駄な言葉が無い。

抗いし父に教わる田仕事よ父の背中が小さく見える        奥出雲 小川寒四郎

 【評】反抗的だった若き日を振り返りつつ、小さくなっていく父に教わる農業。父をいたわりながら、今はひたむきに農業と向き合っている。

煙突にぽとりと落ちた流れ星おばあちゃんちの時計が...