石見智翠館の3投手が、智弁和歌山打線を相手に奮闘。周りの野手やベンチから声を掛けられながら、最後まで力を尽くした。

 投手は大事な場面やピンチになると、打者に集中して周りが見えなくなることが多い。連打を浴びると孤独にもなりがちだ。そんな場面で、仲間の掛け声が冷静にさせ、時に奮い立たせてくれる。

 記者も投手だった高校時代、幾度となく仲間のひと声に助けられた。印象深いのは第98回大会の甲子園で初回に本塁打を打たれた時だ。打球がスタンドに入った瞬間、顔が引きつり、相手校の声援がいつも以上に耳に入って浮足立った。

 そんな時、内野手の一人が大爆笑しながら歩み寄り声を掛けてきた。「なぜ、こんな場面で笑えるのか」と思いつつも気が付けば冷静になり、いつも通りの投球ができるようになった。

 石見智翠館で遊撃を守る山崎凌夢主将も、投手に何度も歩み寄って励ました。智弁和歌山戦の六、七回に2番手の山本由吾投手が打ち込まれると、すかさずマウンドへ。「とにかく思いっきり投げろ」。短い言葉だが、山本は「心強かった」と懸命に腕を振った。

 苦楽を共にした仲間からの言葉はひと味違う。スタンドから熱戦を見守った今、振り返ってみて初めて気付かされた。 (報道部・原暁)