台風が近づいていた。うっそうと茂る南国の樹林が揺れる。沖縄県糸満市南部。太平洋を望む崖にある林の中は昼間でも暗い。戦没者の遺骨収集を続ける具志堅隆松(ぐしけん・たかまつ)(71)が7月下旬、四つんばいになり、地表の土や葉を取り除いていた。

 「あ、歯がある。ボタンやガラス片もある」。ヘッドライトを照らして即座に判断する。「元日本兵の軍服のボタンと防毒マスクのガラスだ」。前日の雨で表土が流されたのか、骨片や軍装品が次々と出てきた。すぐ脇には男性の...