鈴木佑輔さん(左)が普段、人間関係に悩む人たちを迎えている部屋。「少しでも安心できるよう、話しやすい雰囲気を大切にしています」=東京都世田谷区
鈴木佑輔さん(左)が普段、人間関係に悩む人たちを迎えている部屋。「少しでも安心できるよう、話しやすい雰囲気を大切にしています」=東京都世田谷区
身近な人間関係の改善のポイント
身近な人間関係の改善のポイント
家族で話し合う時などに用意すると便利な小道具の一つ、ぬいぐるみ。これを持った人だけが発言できるルールにすれば、途中で誰かが口を挟んで混乱する事態は避けやすくなるという
家族で話し合う時などに用意すると便利な小道具の一つ、ぬいぐるみ。これを持った人だけが発言できるルールにすれば、途中で誰かが口を挟んで混乱する事態は避けやすくなるという
鈴木佑輔さん(左)が普段、人間関係に悩む人たちを迎えている部屋。「少しでも安心できるよう、話しやすい雰囲気を大切にしています」=東京都世田谷区 身近な人間関係の改善のポイント 家族で話し合う時などに用意すると便利な小道具の一つ、ぬいぐるみ。これを持った人だけが発言できるルールにすれば、途中で誰かが口を挟んで混乱する事態は避けやすくなるという

 新型コロナウイルス禍で長引く巣ごもり生活。近隣や家族と接する機会が増え、身近な人との関係に悩む人もいる。できればトラブルは避け、深刻化させたくない。人間関係の修復法「メディエーション」の専門家で、東京メディエーションセンターの代表、鈴木佑輔さんに留意点を聞いた。

 

 ―メディエーションとは。

 「問題の当事者が互いの意見を出し合い、解決策を探る手法です。私は中立の立場でその手助けをする『メディエーター』として、騒音やペットの臭い、ごみ捨てトラブル、離婚の問題などに取り組んできました。裁判官などの権威に頼らない、いわば民間の調停です」

 ―その利点は。

 「裁判のように勝敗を決めず両者で結論を出すため、納得感を得やすく感情的な対立は残りにくい。近所や家族、学校や職場など問題の後も関係が続く場合に有効です」

 ―強制力がなくても解決できるのか。

 「無理にトラブルの原因を除去しても長続きしないばかりか、相手への負の感情が膨らみ真の解決にならない。逆に原因は残っていても、話すことで相手への理解が深まれば、感情や関係を改善するきっかけになり得る。目先の現象にとらわれ過ぎない方がいいのです」

 ―例えば?

 「家事をしない夫に不満を募らせ、離婚まで考える妻は珍しくない。家事分担の問題と思えるが、互いに話してみると、妻が『自分をないがしろにされている点が最もつらい』という、背後の感情が見えてくる。その気持ちを夫婦で共有することが重要で、それなくして分担しても意味がない」

 ―原因がある相手に、どう関わればいいのか。

 「例えば隣家に騒音の苦情を伝える場合、『静かにしてほしい』と要求する言葉は控える。自分を主語にして『眠れず困っている』とか『子どもの受験勉強に支障が出ないか心配』などと、心情を伝えた方が相手の心に響きやすい。人の行動を変えるのは往々にして法やモラルより、気持ちを動かす言葉掛けです」

 ―問題に無関心のような相手もいる。

 「直接話してみると起こる変化があり、意外と糸口が見えてくる。すぐに問題が片付かなくても互いの事情が見えてきて、相手や問題の捉え方が変わることがあります」

 ―面と向かって話ができない関係もある。

 「慎重さが必要だが、第三者に入ってもらうのも一案。冷静に話せる時を見つけ、思い切って気持ちを言葉にしてみる。我慢し続けて、相手への負の感情をため込むだけでは事態は変わりません」

 

▼考え方知るだけでも

 マナーや習慣などを巡って身近な人との間で起こるトラブルは、法的に解決する性質の問題ではなくても当事者には切実だ。メディエーションはそんな地域の課題解決に適した手段として、主に欧米で発展してきた。

 鈴木佑輔さんは「警察や役所には持ち込みにくいため、我慢している人は少なくない。トラブルに至る前での相談も多く寄せられます」という。

 米国などではNPOや公的な機関で活用されてきたというが、日本では発展途上。「実際に利用しなくても、メディエーションの考え方を知るだけで参考になるはずです」

 

 すずき・ゆうすけ  1980年生まれ、東京都出身。都内のボランティアセンターのコーディネーターを経て、英国などで人間関係を修復する手法「メディエーション」を学ぶ。2019年から現職。近隣トラブルや家庭不和などの相談や解決支援に取り組む。