短歌 宮里 勝子選

産直の店より売れぬと持ち帰る足どり重く老農婦の友       飯 南 武田  章

  【評】丹精こめて作り出品したが売れ残り、重い足どりで持ち帰る友の気持ちがしのばれる。葉物などは日持ちが短く、生産者の立場になるとつらい現実が伝わります。

梅雨の亀畑の中に首もたげ足踏ん張って卵を産みぬ        大 田 佐藤 徳郎

  【評】亀の出産を目にした主題は珍しい。目の前の様子が真に迫っていて、読者にはリアルタイムで見ているように浮かび、足踏ん張っての七音が効果的です。

しぶ口にくわえて結んだささ巻の母の仕草のふとよぎる朝   ...