日本の至るところに設置されているカプセルトイ自販機。かつては店舗前や空きスペースなどに2~3台置いてある程度だったが、3000面もの自販機が並ぶ専門店も多数ある。そのカプセルトイの中身に昨今、変化が見られる。かつては「つい集めたくなる」商品が多かったが、最近増えているのが「ちゃんと使える」実用性の高い商品だ。大人女子ニーズやインバウンド需要、さらには海外展開と急成長を遂げるカプセルトイ市場の現在地を、トップシェアを誇るバンダイに聞いた。
【画像】実際に使えるコスメやおりたたみコンテナもガシャポンに
◆4年で3倍以上に急拡大のカプセルトイ市場 30代女性がメイン顧客に
 現在、第5次ブームの真っ只中にあるとされるカプセルトイ。その市場規模も2020年度には385億円だったのが、2023年度には800億円に。さらに2024年度には1200億円と、この4年で3倍以上に急拡大している(バンダイ調べ)。
 カプセルトイの国内売り上げ約6割を占めるのが、バンダイが展開するオリジナルカプセルトイブランド「ガシャポン」だ。昭和の時代には人気アニメのキャラクターフィギュアで小学生男子の間に大ブームを巻き起こした「ガシャポン」だが、現在の市場を牽引しているのは意外にも「30代女性」なのだという。
「もともとカプセルトイはランダムに商品が出てくる特性から、集めて愛でるコレクターアイテムの商品が多かったのですが、カプセルトイの専門店化が進み、設置台数が急激に増えたコロナ禍頃から、より幅広いターゲットが来店するようになり、ニーズが多様化してきました。そうしたなかで登場したのが、実用性の高い商品です。キャラクターフィギュアのコレクション等はしない層でも、この頃に『可愛くて実用性の高い商品がガシャポンにたくさんある』ことを発見してくださったのだと思います」(ガシャポン 企画開発担当)
 コロナ禍に生まれた実用性の高いヒット商品の1つが「めじるしアクセサリー」だ。同商品はビニール傘の柄やペットボトルなど、さまざまな持ち物に簡単に取り付けて目印にするための小さなチャーム。アニメやキャラクター、食品など、300種類を超える多彩なモチーフが展開されている。
「傘や持ち物を分かりやすくめじるしできるため、ガシャポンの人気シリーズとなっています。サウナやジムなどで自分のペットボトルの目印にしたり、推しのキャラクターをじゃら付けしている方もよく見かけますね」(ガシャポン 企画開発担当)
◆「好きな色を選ぶ」が通例のコスメ商品、“選べない”カプセルトイで人気に
 実用性の高い商品は、エコバッグシリーズの「くるんとーと」や光るマスコット、貯金箱、おりたたみコンテナなど多数展開。また「カプセルトイ=丸いカプセル」だったが、最大A4サイズ、厚さ1センチまでの平面商材が出てくる「フラットガシャポン」など、自販機を自社開発することで、形状も進化している。
「ガシャポンは毎月120種類以上の商品を展開しています。そのため商品の開発スピードが極めて速く、世相やトレンドを反映しやすいのも強みです。ガシャポンのカプセルには、時代がギュッと詰め込まれているんです」(ガシャポン 企画開発担当)
 昨今は、人気コスメをミニチュアチャームなどに模した「ガシャポン」が、コスメ好きな女性たちを夢中にさせている。SNSでは「ガシャポン」を通してタイコスメの存在を知った人もいるようだ。こうしたコスメ系「ガシャポン」のなかでも異彩を放っているのが、実際に使えるコスメ「Pon de Couleur」(ポンデクルール)シリーズだ。
「『Pon de Couleur』は、アパレルや日用雑貨を展開するバンダイのライフスタイル事業部が『あたらしい色(じぶん)に出会おう』をコンセプトに立ち上げたコスメブランドです。『新しい色との出会い』というコンセプトと、ランダムに商品が出てくるガシャポンならではのワクワク感の親和性の高さから、コスメとしては異例の販路としてガシャポンが採用されました」(ガシャポン 企画開発担当)
 とは言え、コスメは自分で好きな色を選ぶことが重要な商材だけに、カプセルトイには不向きな側面もあるように感じる。ところが人気キャラクターとコラボした「Pon de Couleur」は、新商品が出るたびにSNSで話題を呼ぶ大人気シリーズに。“可愛くて実用的”な「ガシャポン」はやはり強いようだ。
「SNSなどの反響では、自分では選べなかった色と出会えたことを前向きに受け止めてくださっている方が多い印象です。またコラボレーションするキャラクターの世界観をデザインしたコスメ容器が、『グッズとしても可愛くて集めたくなる』と好評をいただいています。『好きなキャラクターだから、初めての色に挑戦してみた』という声もあり、『Pon de Couleur』本来のコンセプトが届いているのを実感しますね」(ガシャポン 企画開発担当)
 子どもの頃に憧れたアニメのヒロインやキャラクターをモチーフにしたコスメが、大人女子の心をくすぐっている──。ポイントを押さえた魅力的な商品開発力も、「ガシャポン」を通して無数のIPとコラボをしてきたバンダイならではの強みだと言えそうだ。
◆海外需要が急拡大するなか、新たなファミリーレジャーとしてフィリピンで人気
 昨今のカプセルトイ市場の成長の追い風となっている要因の1つが、インバウンド需要だ。繁華街や観光地の専門店では、「平日の来店客のほとんどは訪日外国人」という店舗もある。さらに、バンダイでは日本が世界に誇るカプセルトイの海外展開を推進。すでに世界18のエリアに115店舗の専門店を展開している(2025年10月30日現在)。
「海外では“ガシャポンバンダイオフィシャルショップ=アニメグッズ”をいち早く手に入れられるお店という認識を持つ人も増えています。動画による配信環境が整ったおかげで世界中でタイムラグなくアニメが視聴できるようになりましたが、グッズは手に入りにくいというエリアは少なくありません。その点、ガシャポンは商品の開発スピードが速く、新作アニメの配信に合わせて商品を供給することができるのが強みです」(ガシャポン 海外セールス担当)
 進出エリアは北米28店舗、中国23店舗に続き、フィリピンが20店舗となっている。
「特に北米は重点エリアかつトレンドの発信源として積極的に出店を進め、ロサンゼルスやニューヨークなど都市部を中心に存在感を拡大しています。欧州ではロンドンやマドリードなど主要都市での展開が進み、SNSを通じてガシャポン体験が広がっています。またアジア圏では、東南アジアのフィリピンやタイなどで家族型レジャー施設としての人気が急上昇。フィリピンでは、『訪れるたびに新しい発見がある体験型ショップ』として多くのファミリー層に親しまれています」(ガシャポン 海外セールス担当)
 そのほか、北米でも新規オープン店舗は増加中。日本発のアミューズメント文化として目覚ましく普及しつつある。
「世界にはまだカプセルトイが浸透していないエリアも多く、“ハンドルを回して商品が出てくる”というアクションをご存知ない方も少なくありません。まずは体験していただく環境を各エリアに整えて、日本を代表するカプセルトイ文化を世界に浸透させていきたいと思います」(ガシャポン 海外セールス担当)
 バンダイでは、10月31日から11月2日まで池袋・サンシャインシティ 文化会館ビル4F 展示ホールBにて、発売前の新商品など約300種類以上が展示される『ガシャポンに超夢中展2025』を開催。
「ガシャポンならではの魅力を存分に体感できる大型イベントです。今年はガシャポン初の公式ソング『ガシャPOP』をテーマに、参加型コンテンツやステージイベントも展開します」
(文/児玉澄子)
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