「小学館の図鑑 NEO」シリーズは累計発行部数1100万部超。そこに登場する生き物をデジタルで表現した「ずかんミュージアム銀座」が7月、東京に開業した。
緑深い森で戯れる金色の毛のサル、夕暮れの草原を移動するヌーの群れ―。同施設の特長は、鮮やかなアニメーションで映し出す生き物や自然だ。水辺や森など五つのゾーンがあり、大小の画面に次々現れる生き物が時間や天候の経過に合わせ、普段の姿や警戒しているときの行動を見せる。
来場者は入館時に借りられる専用端末を手に、生き物を探したり、特徴を記録したり。親子で訪れた5歳の三石真輝君は2歳から図鑑のファン。アリの目線を体感する雑木林のゾーンに夢中になったといい「カブトムシが飛ぶところが格好良かった」と笑顔を見せた。
小学館が学習図鑑の刊行を始めたのは65年前。図解はイラストから写真へ、さらにDVD映像を付けて幼児も楽しめるように進化してきた。同社の図鑑室長、北川吉隆さんは「革新的なデジタル画像で生き物に関心を持つ子が増えるのでは。興味が湧いたら、紙の図鑑の気軽にめくれる魅力を生かして知識を深めてほしい」と期待する。
デジタル技術の活用は読書にも広がる。ポプラ社は小中学校向けに電子書籍の読み放題サービス「Yomokka!(よもっか!)」を開始。文部科学省の「GIGAスクール構想」で児童生徒に1人1台配備が進むデジタル端末を読書に使ってもらおうという試みだ。
絵本や読み物など幅広い作品から好みや学年で本を検索。冊数制限がなく、本が貸し出し中ということもない。2021年度中に同社の千冊以上を掲載予定という。
デジタルならではの機能で、ランキングを作ったり感想を共有したりでき、読書履歴も記録できる。お薦めの一冊を選んでくれるページもあり、文字は拡大が可能だ。
7月から、自治体、学校単位で申し込むと21年度は利用無料になるキャンペーンを実施。22年度から他の出版社も参加、有料版で本格稼働する。
文科省の調査では、公立学校への電子書籍の導入は予算不足などで一部にとどまるものの、新型コロナウイルス禍の20年に導入が増えるなど、活用に注目が集まる。元小学校教諭の経験を生かしてサービスを開発したポプラ社の下川ちひろさんは「読書が苦手でも集中できたとの声が届き、新しい体験として楽しんでもらえると思う。本が子どもたちのコミュニケーションにつながったらうれしい」としている。