スモーキーな香りと味を楽しめる薫製。実は自宅でも手軽に作れる調理法があるという。一般社団法人「日本燻製(くんせい)協会」代表理事の佐藤暁子さんに調理のこつを聞いた。
―薫製の魅力とは。
「ひと手間をかけて食材に香りを加えることで、リッチな味わいになり、食材の価値をぐんと上げられます。パーティーなどのおもてなし料理に重宝します」
―どのような食材が適していますか。
「薫製にしたり、加熱したりしなくてもそのまま食べられる物は、下ごしらえの必要がなく、簡単に作れるのでお薦めです。例えばチーズやミックスナッツ、畳いわし、するめです。向いていないのは、野菜やフルーツなど水分の多い物。水分に酸性の煙がくっつき、酸っぱくて煙臭くなってしまいます」
―道具は。
「中華鍋とふた、鍋の直径よりも小さいサイズの網、スモークチップ、アルミホイルを用意してください。ふたは密閉できていなくても、極端に大きな隙間がなければ大丈夫です。大きめのボウルでも代用できます。スモークチップはホームセンターやアウトドアショップなどで売っています」
―調理の手順は。
「中華鍋の底にアルミホイルを敷き、スモークチップをひとつかみ(10~15グラム)入れます。その上に網をセットして食材を並べ、ふたをして火にかけてください。チーズを薫製にするなら網にくっつかないようにクッキングシートを敷きましょう。最初は中火で、白い煙が出始めたら弱火にします。時間はだいたい10分程度です。生で食べられない物は、食中毒を防止するため必ず最後に火を通してください」
―室内に煙がこもらないようにするには。
「火を止めた後、すぐにふたを開けないことです。必ず5~10分おいて、煙が落ち着いてから開けてください。換気扇もフル稼働させていれば、煙はこもりませんし、臭わないでしょう」
―ガスこんろの温度センサーが作動して、火が消えてしまう場合は。
「高温になってもセンサーが作動しないようにできる『焼き台』という道具があります。ガスこんろの代わりにカセットこんろを使ってもいいですね。絶対に強火にせず、火元から目を離さないようにしてください。使用済みのスモークチップには水をかけ、完全に火を消してから捨てましょう」 さとう・あきこ 1975年生まれ、愛知県出身。OLや薫製バーの経営を経て、現職。全国各地で定期的に教室を開いている。書籍「俺の燻製(くんせい)料理」や「ちょい足し燻製プログラム」を監修。
異なる香りや色楽しんで
薫製作りに欠かせないスモークチップ。木を細かくカットしたもので、桜やブナ、ナラなど木の種類によってそれぞれ異なる香りや色付きを楽しめる。
佐藤暁子さんによると、桜は華やかな香りに仕上げられるのが特徴。スモークチップの中でもオーソドックスなタイプで「チーズを薫製にするのに合う」。一方、ブナは渋めで個性的な風味を楽しめ、ナッツ類に向いているという。
1回当たりのチップの使用量はごくわずか。さまざまなタイプを試したければ、小さめの袋(50~100グラム入り)を購入すると、余らせずに済む。
日本燻製協会はホームページで薫製の作り方やチップの特徴をまとめたレシピ集「イエナカ燻製」を公開しており、その冊子(550円)を購入できる。問い合わせは協会のホームページで。