今年7~9月期の実質国内総生産(GDP)は6四半期ぶりのマイナス成長となった。米国の関税措置などが影響したためだが「景気悪化」と受け止めるのは早計だ。いま必要な政策はインフレの抑制と苦境にある家計への支援であり、経済対策におけるばらまき的な財政拡大の口実とすることは認められない。
内閣府が発表した7~9月期の実質成長率は前期比の年率換算で1・8%減だった。マイナスは昨年1~3月期以来だ。
GDP減少の要因の一つは、トランプ関税による輸出の落ち込みである。主力の自動車は日米合意に基づき9月半ばから税率が引き下げられたものの、それまでは27・5%の高関税を課され、輸出減につながった。
もう一つは民間住宅投資の減少だ。新築住宅の省エネ基準が春から強化された影響で、その前に発生した駆け込みの反動減が表れた。特殊要因とみて差し支えなかろう。
これらの事情が重なりマイナス成長を記録したことで、景気を懸念する声が出るのはもっともだ。しかし、発表の相次ぐ企業決算が総じて底堅い点や高水準の株価、雇用情勢などから景気は悪化しているというより、一時的な足踏み状態と見るのが妥当ではないか。
先行きは自動車への米関税の引き下げや円安の進行が、輸出への打撃を緩和すると予想するエコノミストが多い。
むしろ国内経済の動きで心配したいのが、景気けん引役の個人消費が前期比0・1%増にとどまった弱さ。コメなど食品を中心とする物価高騰に賃上げが依然追い付かないためで、家計の窮状が鮮明だ。高市早苗首相が指示した経済対策は、インフレの抑制と困っている世帯への支援に力を入れるべきだろう。
ところが、その柱である物価高への対応は肝心な手だてを欠いている。日銀による追加利上げだ。日銀による超低金利の継続は過度の円安を招き、輸入コスト増を通じたインフレの長期化につながっている。日銀の目標以上の物価上昇が3年半も続く。高市首相は利上げへの消極姿勢を改め、政府・日銀が消費の下支えへ政策運営で足並みをそろえる時である。
対策で検討中の家計支援にはガソリン減税をはじめ電気・ガス料金の補助、地方自治体への交付金による商品券の発行などが並ぶ。エネルギー関連の減税や補助は脱炭素に逆行し、商品券などはかえって需要を刺激して物価高を悪化させる恐れがある。ばらまきは避けて低所得世帯などに対象を絞ることが不可欠だ。
首相は近く経済対策をまとめて、財源となる補正予算案を国会へ提出する。焦点の歳出額を巡っては経済財政諮問会議の民間議員らから前年度補正を上回る規模や、財政健全化のための基礎的財政収支目標の見直しを求める声が早くも出ている。
高市首相の掲げる「責任ある積極財政」を実現するためだが、受け入れ難い。アベノミクスが成長力は高めずに、財政支出の拡大によって国債残高の山を築いたことを思い出さねばならない。
首相は基礎的収支を単年度に黒字化する目標の変更に意欲を示しており、金融市場では財政運営姿勢への不安から長期金利が一時、17年半ぶりの高水準へ上昇した。主要国最悪の日本の財政状態に対して、市場の信認を揺るがす危険な無責任さと言うほかあるまい。













