今回は「プライベートゾーン(パーツ)」のお話です。大人のあなたはプライベートゾーンって、知っていますか?
プライベートゾーンとは体の中で、他人が勝手に触ったり、見ようとしたり、他人に触らせたり見せたりしてはいけない部分のことです。「胸」「性器」「おしり」と「口」を指します。どれも人間の体の中につながる大切な場所です。子どもに伝えるときは「水着で隠れるところ+口」と伝えれば分かりやすいです。
これは世界共通の考え方です。1994年、エジプトのカイロで開かれた「国際人口開発会議」(カイロ会議)で「自分の体について自分の意思が尊重され、自分自身で決められる権利」が提唱されました。2009年には国連教育科学文化機関(ユネスコ)が中心になり、5~8歳の子どもの学習目標として「プライベートゾーンを知る」が挙げられました。欧州各国や台湾などは、これを踏まえて性教育の方針を出しています。残念ながら日本の小中学校では、性行為や避妊については教えないことになっており、世界から取り残されているのが現状です。
プライベートゾーンを伝えることで「あなた以外の人に勝手に触らせたり、見せたりしてはいけないよ」「見られそうになったり、触られそうになったら『嫌だ』『NO』と言っていいんだよ」ということを繰り返し伝えていきましょう。子どもが性被害に遭うときは加害者から「秘密だよ」「誰にも言ってはいけないよ」と言われ、保護者らに伝えられないことが多く、被害が長引いたり、ますます傷ついたりするからです。
カナダの有名な性教育指導者のメグ・ヒッキリングさんは、「性教育を行うのは、子どもが性被害に遭うのを防ぐため。性被害に遭ったときに『やめて』と言えて、大人に伝えることができるようにするため」と説いています。
私自身、性被害に遭った子どもに会うことがありますが、まず「大人に話すことができて偉かったね。もう大丈夫だよ」という言葉を伝えます。「やめて」と言える子どもに育てるためには、プライベートゾーンの存在を伝えることが第一歩です。(島根大保健管理センター教授)
子どもに伝える「性」について、河野先生に質問してみませんか? メールはkurashi@sanin-chuo.co.jp。