サンリオピューロランドが、この12月に35周年を迎えた。コロナ禍では臨時休業を余儀なくされるなど紆余曲折もありながら、現在はファンやインバウンド客で大盛況。そんな中、35周年を記念した10年ぶりの新作パレード『The Quest of Wonders Parade』が好評を得ている。ディーン・フジオカやRevoなど意外なクリエイター陣が参加する今作には、「かわいい」だけではない、現代ならではのメッセージも。サンリオの理念として知られる“みんななかよく”だが、令和の今だからこその思いとは? パレード担当者と、広報担当者に話を聞いた。
【写真】新パレードかわよ…!ディーンとプリンあ見つめ合い
■落ち込みからV字回復して大盛況、コロナ禍後にあらためて感じた“つながり”
12月に35周年を迎えたサンリオピューロランド(以下、ピューロランド)は、東京・多摩市にある屋内型テーマパーク。一時期は来客数の落ち込みや、コロナ禍には長期間にわたる休館があったものの、その人気は見事にV字回復。日本はもちろん、世界中からサンリオファンや家族連れが訪れる施設として人気を誇っている。
現在は『Sanrio Puroland 35th Anniversary』を展開しており、広報担当者は「35年間支えてくださったお客さまへの今までの感謝と、これからもピューロランドが“笑顔”になれる場所でありたい、ということがイベント全体のコアメッセージとして込められています」とコメント。実際、新しいパレードや35周年のイベントを目的に来場する人などで、館内はとても盛り上がっているそうだ。
35周年イベントのデザインのモチーフは“リボン”。これについてパレード担当者は、格別な思いがあるという。
「新型コロナウイルス感染拡大の余波を経て、ここ2年くらいでやっとお客さまと間近でコミュニケーションを取れるようになったなと感じています。さらにつながりを深くしていきたい、広げていきたいというような思いでリボンのモチーフを選びました」。
コロナ禍の経験を踏まえ、遠方に住むファンやピューロランドに足を運べない人のための施策も実施。SNSやYouTubeの発信には特に力を入れているとのことで、最近は新パレードが出来上がるまでのメイキングコンテンツも配信している。
そんなピューロランドの魅力を語る上で欠かせないのが、ショーやパレードだ。サンリオキャラクター×歌舞伎をテーマにした『KAWAII KABUKI~ハローキティ一座の桃太郎~』や、先日まで上演されていた日本の“Kawaii”を存分に詰め込んだパレード『Miracle Gift Parade』など、いずれの演目もリピーターが多い人気コンテンツだ。
今回は、ピューロランドのシンボル・知恵の木の周りで行われるパレードが、10年ぶりに刷新。12月5日より、『The Quest of Wonders Parade』が上演されている。同公演は、ハローキティが “永遠にしあわせになれる秘宝”の本を見つけたところから物語がスタート。それぞれが思う「しあわせ」に期待を膨らませながら、キャラクターたちが秘宝を探しに冒険へ出発する…といった内容だ。
ただ、一口に「しあわせ」と言っても、人によってとらえ方は様々。とくに社会不安などが増している昨今にあっては“絵空事”のように感じる人もいるかもしれないが、そこにはピューロランドとしての深い思いがある。
「個性や価値観の違いをそれぞれが尊重しながら生きていくこと、みんなが笑顔でしあわせでいられる世界になっていくこと…そんな願いを込めています。みんながお互いを思いやれたら、価値観の違う相手のバックグラウンドを想像できたら、世界はもっと平和になるんじゃないか。そうしたことを考えるきっかけになるパレードになってほしいと思い、制作しました」(パレード担当者/以下同)
「相手のバックグラウンドを想像する」という意味では、日々増えていく訪日外国人の来場者も考慮した工夫がなされている。これまで、ピューロランドのショーやパレードは、日本語で物語が展開していくものがほとんど。担当者自身も「どのようにしたら言語の壁を越えて、パレードの魅力をより多くの方々に伝えることができるのだろうか」と課題に感じていたとのこと。だからこそ今回は、「海外の方もエンタメとして楽しめるよう、デジタル演出や特殊効果、エアリアルスフィアなどの特殊なパフォーマンスを盛り込みました」という。
一方で、日本のファンの間でも話題になっているのがクリエイター陣だ。ディーン・フジオカや蒼井翔太、沢城みゆきが声の出演を、振付をTAKAHIROやakane、テーマソングの作詞・作曲をRevoらが務めている。起用の背景には、パレードのクオリティアップはもちろん、「新規ファン獲得」への期待もある。
「ここ数年、サンリオのキャラクターたちの人気や、認知度が高まってきている状況ではあるものの、まだまだピューロランドという場所を知らない方もたくさんいます。各方面で活躍されている方々にご協力いただくことで、間口を広く持つことを意識しました」
とはいえ、ピューロランドとの組み合わせは、少々意外に思えるメンツもいる。
ディーン・フジオカはドラマやアーティスト活動によりクールな印象が強く、サンリオの世界とは無縁のようにも思える。だが、「以前からサンリオ好きだと伺っていて。また、株式会社サンリオエンターテイメントではSDGsに力を入れているのですが、ディーンさんご自身も自然保護活動に興味を持たれているとのこと。そのため、実は親和性がかなり高いのではないかと思い、お声がけさせていただきました」とのこと。パレードでは冒険の世界へと誘う司書となり、「秘宝の神話を知り尽くし、その正体が何かをナビゲートする役割」を担っているのだそうだ。
また、テーマソングの作詞・作曲をしたRevoといえば、自身のプロジェクト「Linked Horizon」によるテレビアニメ『進撃の巨人』のオープニング主題歌「紅蓮の弓矢」があまりに有名。一見、サンリオの世界観と合うのか疑問もわくが…。
「お受けいただけるものかとドキドキしながらお声がけしたところ、大変前向きに取り組んでくださって。楽曲を作られる上で実際にピューロランドに足を運んでくださり、“みんななかよく”のメッセージを受け取っていただけたと聞いています。テーマソング『My Happiness』はとてもキャッチーでポップな仕上がりとなりました」
ちなみに、今回のショーには新たにハンギョドン、バッドばつ丸、あひるのペックルも仲間入り。物語の軸となる冒険の世界へと引っ張ってくれるキャラクターであり、それぞれの持つ夢や特技からの親和性や、元気で活発、かつコミカルな性格に期待しての起用となったとのことだ。
そんなパレードは、“みんななかよく”という理念が根底にあるからか、これまでも「勧善懲悪ではない」ストーリーが魅力となってきた。
「今までの『Miracle Gift Parade』や『KAWAII KABUKI~ハローキティ一座の桃太郎~』でも、敵のように見えるキャラクターが出てきましたが、いずれの場合も『やっつけたい』という敵対意識を持っているわけではないんです。特に今回登場する聖龍は、言葉をしゃべらず、鳴き声と動きだけで感情表現をするキャラクター。それを感じ取って、仲良くなる術を見つけるという展開にしました」
35年前、ピューロランドが誕生したときから根付く精神は、新作パレードでもブレることはない。
「世界では戦争が続いていたり、身近なところでも日常的に争いやぶつかり合いが起きています。冒頭にもお伝えしたとおり、パレードを通じて価値観を認め合うこと、相手のバックグラウンドを想像することを伝え、“みんななかよく”のメッセージを届け続けていきたいです」
さらに、令和の今ならではの変化もあった。
「多様性や個性はもちろん大事で尊重されるべきですが、他の人の個性や自由を奪うものではいけないとも思っていて。自分だけではなく、他の人のことをより良く考えられるようになれば、幸福度は上がっていくんじゃないかな? と考えました。今までの演目は個人にフォーカスを当て、『わかり合えない相手でも、思いやればきっと心が通じる瞬間はあるよね』という思いを込めていたのですが、さらに視野を広げて『いろんな人がいるよね』ということも踏まえた内容にしたのは、今回ならではだと思っています」
実際、このメッセージは来場者にも伝わっているようで、SNSでは「考えるきっかけになった」との声も寄せられている。
「“みんななかよく”の“みんな”とは誰なのか? “みんな”はどこまでなのか? いろいろな考えの人に対し、思いやりを持って接することの大切さが伝わると嬉しいなと感じています。パレードやイベントを観ていただくことで、この輪がより広がっていくのではないかと期待しています」(パレード担当者)
多くのテーマパークで、様々なパレードやショーが展開されている昨今。その中で、新たに生み出された『The Quest of Wonders Parade』は、35年間“みんななかよく”を徹底的に考え、実践してきたピューロランドならではのショーとなった。
広報担当は「35周年というひとつの節目、過去に遊びに来た時の思い出を振り返ったり、1年間の特別なアニバーサリーを純粋に満喫したりと、お客さまの数だけ、たくさんの思い出や楽しみ方があるかと思います。ぜひ世代や性別、国籍を問わず、たくさんの人に笑顔になっていただけると嬉しいです」とコメント。
35周年の集大成でもあり、令和の今ならではの新作パレード。それがどんな思いを呼び起こしてくれるのか、ぜひ直接目にして、感じ取ってみてほしい。
(C)2025 SANRIO CO., LTD. TOKYO, JAPAN 著作 株式会社サンリオ
(文:於ありさ)
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