日本の敗戦と混乱の中、中国に残された女性や子どもたちは「棄民」として多大な労苦を味わってきた。帰国後も厳しい境遇にいる人は、その家族も含め少なくない。国の責任を問う声もなかなか届かず、歳月の流れとともに問題は忘れられようとしている。(敬称略、文は共同通信編集委員・内田恭司、写真は同・堀誠)

▽取り残されて

 「本当に?あなたは私たちの妹に間違いありません」。中国から帰国した池田澄江(81)が親族にたどり着いたのは、奇跡のような偶然だった。

 池田は、旧満州に開拓移民として渡った両親の下で1944年に生まれた。だが、ソ連軍侵攻と日本...