お笑い芸人の出川哲朗さんはお坊ちゃま育ちだったそうだ。実家は創業130年を超す老舗のり問屋。業績が好調な頃は兄弟それぞれに専属のお手伝いさんがいたという。
現在は少なくなったが、ある日は熱湯風呂に入り、またある日はザリガニに鼻を挟まれる芸風とのギャップが面白い。そういえば裕福な家庭で育った人は他者を気遣い、自慢しないといった傾向があると聞いた。確かに出川さんは他人をおとしめて笑いを取りはしない。
就任1カ月が過ぎた米ニューヨークのゾーラン・マムダニ市長も裕福な家庭に生まれた。イスラム教徒の移民で、ラッパーとしても活動した異色の34歳。資本主義の象徴とも言える同市で「富の再分配」を訴え、民主社会主義者を自認する。
家賃値上げの凍結や市営バスの無料化、市営食料品店の設立-。一貫して弱者や少数派に寄り添った政策を掲げ、富裕層や大企業への課税強化を説く。若者を中心に資本主義に対する有象無象の不平不満を取り込み、自由と競争を愛する国で新たな処方箋を示している。
マムダニ氏同様、出川さんも弱者の側に立ち、自分を犠牲にしたリアクション芸でお茶の間に笑いを届けてくれる。「ギャラじゃないのよ。お客さんの笑顔が大事なのよ」とぶれない。果たして316議席を獲得し、ほくほく顔であろう時の人は、いつの間にか増えてしまった弱者を笑顔にしてくれるだろうか。(玉)













