小泉八雲の夫人・セツから折戸徳三郎宛てに出された手紙(資料)
小泉八雲の夫人・セツから折戸徳三郎宛てに出された手紙(資料)

 その2通の手紙にはそれぞれ「小泉せつ」「小泉節子」と送り主の名が確かに記してある。夫である八雲(ラフカディオ・ハーン)の最期の様子や葬儀の報告、生前の厚情への感謝などがつづられ、内容からして付き合いの深さがうかがえる。宛てた先は益田町(現益田市)の折戸徳三郎(1871~1926年)。先日、貴重な2通の複写を見せてもらった。

 益田生まれの折戸は島根県尋常中学で八雲の教え子だった。英語の成績優秀で八雲のために民話の収集を手伝ったとされる。よほど気に入られ、信頼されたのだろう。八雲が松江を離れてからも師弟関係は途切れることなく、英訳の資料を提供し続けた。

 恩師の招きで上京し、一家で近くに住んで著作活動を支えた時期もあった。そこで家族同士の付き合いがあったようだ。となると舞台が熊本に移り、物語は終盤に向かう朝ドラ『ばけばけ』で折戸役の登場を待ちたいところだが、どうだろう。

 何せ八雲は著作の協力者の存在が公になるのをひたすらに嫌がったと伝えられる。その意をくみ、黒子に徹し多くを語ろうとしなかったのが折戸だった。謙虚さや献身ぶりをセツ夫人はもちろん知っていただろう。手紙に込められた思いがじわり伝わってくる。

 折戸は後に益田町長を務め、まちの近代化に力を尽くした。たとえドラマに登場しなくても功績にもっとスポットを当てたい郷土の偉人である。(史)