ミラノ・コルティナ冬季五輪の男子デュアルモーグルで銀メダルを獲得した堀島行真選手(左)=15日、リビーニョ(共同)
ミラノ・コルティナ冬季五輪の男子デュアルモーグルで銀メダルを獲得した堀島行真選手(左)=15日、リビーニョ(共同)

 冬季五輪で日本人選手が大活躍している。雪や氷に艶(あで)やかなウエアも映え、冬のスポーツの魅力を引き立てている。そのウエアには日本メーカーが開発した環境負荷が少なく極寒でも快適な着心地の新素材が使われているそうだ。

 かれこれ40年も前のことになるが、苗場スキー場(新潟県湯沢町)に行ったとき、あるメーカーが宣伝用に紙製のウインドブレーカーを配っていた。ペラペラに薄いが、着てみると暖かい。試しにそれを羽織って滑ってみると、風を通さず快適だった。

 それもそのはず、古くから紙の保温力は知られており、紙製の衣類「紙衣(かみこ)」は、松尾芭蕉が「奥の細道」の旅に防寒具として持参した。楮(こうぞ)の紙をコンニャクの根から採った糊(のり)で貼り合わせたものだという。

 質素にして廉価。僧侶が使う紙衣や庶民の小袖、羽織、夜具、頭巾にも使われた。歌舞伎では落ちぶれた(やつれた)人物の衣装だ。薄い衣にしみじみと人生を重ねたのか、夏目漱石は<我死なば紙衣を誰に譲るべき>と詠んでいる。

 防寒といえば、新聞紙を体に巻き、その上から衣類を羽織るサバイバル法がある。冬の災害時に生き延びるための知恵だ。スマートフォンでは災害ニュースは読めても、紙の新聞のように寒さはしのげない。油断するとかさばってしまう古新聞だが、資源ごみに出す前に、日本人の知恵を思い出し、少しは残しておこうと、家族を説得してみたい。(裕)