『令和に官能小説作ってます』キービジュアル(C)「令和に官能小説作ってます」製作委員会
『令和に官能小説作ってます』キービジュアル(C)「令和に官能小説作ってます」製作委員会

 テレビ大阪は、チュートリアル・徳井義実&桃月なしこがW主演を務めるテレビ大阪ドラマ『令和に官能小説作ってます』(※関西ローカル)の監督×脚本家×プロデューサーによるインタビュー内容を公開した。

【場面カット】神室氷雨(内藤秀一郎)と真剣な表情で話す大泉ましろ(桃月なしこ)

 フランス書院で実際に起こった話をベースにした同名小説を原案とした、ちょっと淫らで、たっぷり笑える異色のお仕事ドラマ。出版社で働くことを夢見て「フランス出版」に転職した大泉ましろ(桃月)が配属されたのは、まさかの「官能小説編集部」だった。恐る恐る扉を開けてみると、編集長の玉川丈治(徳井)らが激論を交わしていた。戸惑うましろだが、一癖も二癖もある上司や作家たちと関わる中で、官能小説編集者のやりがいを見出し、プロフェッショナルへと成長していく…。

 第7話では、ましろが初めて担当した神室氷雨(内藤秀一郎)の新作『雌囚のごとく』の発売日に、「擬音の魔術師」と評される官能小説家の御手洗民生(平井まさあき)が編集室を訪れ、自分が開発したオノマトペが使用された盗作だと主張。ましろ、玉川、神室、御手洗ら総勢10人によるドタバタ議論の様子を17分間にわたるワンカットで撮影した。

 今回、インタビューに応じたのは、監督の山口淳太氏、脚本の我人祥太氏、プロデューサーの石田雄作氏の3人。規制が多いこの時代に本作品を世に放つべく、向き合い、奮闘してきた道のりや裏話を明かす。

【インタビュー】
――コンプライアンスが厳しい現代において、あえて「官能小説」に着目された理由を教えてください。
石田雄作:本作の原案本『令和に官能小説作ってます フランス書院編集部物語』は、森永恭平プロデューサーに、ドラマのテーマを模索するなかでご紹介いただいた一冊です。深夜ドラマで「不倫」や「復讐」といった“艶っぽい映像表現”が活況のなか、あえて「官能小説」という“活字エロス”を掘り下げるのはおもしろいなと感じました。

今はデジタルコンテンツにあふれていて、欲望が即座に可視化されます。しかし、官能小説は読んで想像しなければならない。「欲望にたどり着くまで時間を要すること」が逆に現代にハマると思いました。

――山口監督はこのテーマを聞いて、どんな印象をお持ちになりましたか?
山口淳太:正直なところ、個人的にはセクシャルな映像作品を作ることに気が進まず、懸念点も多く感じたため、どうしたものかと悩みました。しかし、企画書の段階で「こうだったらおもしろいと思うのですが……」とお伝えしたところ、1ヶ月後にすべて修正し、あらためてご依頼してくださったんです。その後は考え方を変えて「歴史ある官能小説をどうコメディーにしていくか」を念頭に取り組ませていただきました。

――具体的には、どのような点を危惧されたのでしょうか?
山口淳太:一番は主人公の気持ちですね。性的なことに興味がある女性だったらいいんですが、生身の人間が演じる実写作品において、「嫌だ」と言っている方に対して、それでも「この仕事をしろ」と求めるのはハラスメント以外の何ものでもありません。それは僕としても絶対に避けたいところでした。

――我人さんはどんな印象をお持ちになりましたか?
我人祥太:原案を拝見したのですが、知らない世界で“おもしろいな”と感じる一方、僕も「深夜の刺激的なエロドラマ」になるならお断りしようと考えていました。「真面目に“お仕事もの”をやっていいなら、ぜひ書きたいです」とお伝えしたところ、「官能小説を作る人たちのお仕事を真摯に描きたいんです」と返してくださったので、「それならばぜひ」とお引き受けしました。

――ドラマを拝見すると、すべての社会人に通ずるメッセージ性や働くうえで大事なことが描かれている印象を受けました。そのあたりも意識されたんですか?
我人祥太:そうですね。『重版出来!』や『舟を編む』など、真面目なお仕事ドラマも参考にしています。

――ドラマ制作実現に向け、事前の段階で苦労した点を教えてください。
石田雄作:まずはクリエイターの方々にご賛同いただくにあたり、我々のなかにあった「ただの『刺激的な深夜ドラマ』にはしたくない」という思いをしっかりお伝えしなければならないと考えました。

キャラ立ちや刺激は求めつつも、やろうとしていることは「官能小説を大真面目に考えている方々のお仕事ドラマ」です。そこは、原案のマンガを読んでも、編集部に取材をしても感じたところだったので、クリエイターの方々はもちろん、社内にも理解してもらえるよう尽力しました。各部署の承認を得るのは非常に難しかったし、ドラマ化に向けてこんなに苦労したのは初めてでしたね。

――「官能小説がテーマ」だと聞くと、どうしてもガードを張られるところもあると思います。そのあたりも大変だったのではないでしょうか?
石田雄作:まさに「官能小説をテーマにやりたい」と伝えたとき、各部署の反応は戸惑いに満ちたものでした。しかし、その偏見を払拭することこそ、このドラマを通して実現したかったこと。私自身、あらためて「普通とは何か」を強く意識するきっかけにもなりました。

――山口監督、我人さんはいかがでしょう?
山口淳太:もともと本作に参加している脚本家・池亀三太さんと物語を作っていたのですが、原案を30分×10話まで膨らませることに苦労していました。そんななか我人さんが加わり、的確なアドバイスをしてくださったんです。おかげで内容が詰まった連続ドラマになりましたし、このときの脚本作りがすべてだったと今でも思っています。

我人祥太:確かに原案本はおもしろいんですが一巻完結なので、ドラマにすると3〜4話ほどにしかならないんですよね。例えば、ドラマ化にあたって恋愛要素を入れ、話を膨らませることは可能ですが、この作品はそういうことでもない。当初は、10話まで書きつつも、「ここは取材をさせてほしい」と空白がたくさんあるプロット(構想)を提出しました。

その後、実際に官能小説を制作している「フランス書院」の編集長にお話を聞く機会に恵まれました。そこで飛び出したエピソードがおもしろく、結果として脚本のほとんどが実話に即したものとなっています。だから僕としては苦労した実感がないんです。

――取材があったことで、よりドラマに深みが増したと。
我人祥太:そうですね。「脚本家脳」では絶対に思いつかないことばかり出てきました。だから取材に行ってからは一瞬でプロットができたんです。

――制作がスタートしてから、何か壁を感じることはありましたか?
石田雄作:今回のテーマを扱う以上、各部署のチェックは避けて通れない道でした。脚本を作る中で、社内で何重にもチェックがあるのは初めての経験でしたし、「いばらの道を歩む決断をしちゃったな」と思いました(笑)。

地上波で放送するうえでの「表現の線引き」はとても難しく、印象深い経験でした。例えば、第1話のタイトル会議のシーンで、我人さんが脚本に「肉棒に飢えた」という比喩表現を入れていたんです。各部署に確認すると「OK」と言う人もいれば「NG」と言う人もいて……。結果的に「比喩でも直接的表現に近い」としてNGになり、代わりに「愛蜜に飢えた」へと表現を変更しました。脚本家さんや監督さんの血と汗と涙の結晶を変えるなんて御法度。それなのに同様のことが相次ぎ、キャストやスタッフの皆さんにもご迷惑をおかけすることが多々ありました。

我人祥太:僕もいろいろと試しながら書いていたのですが、その基準はいまだに分かっていません。石田さんがおっしゃった「肉棒」も、別シーンではもともと「小さな肉棒が巨大な肉柱に膨張する」という台詞で使っていたのですが、「小さな肉楊枝が巨大な肉串に成長する」に変更となりました。ほかにも、「竿1に対して穴2」もNGとなり、最終的に「男1に対して女2」になって……。それを繰り返していくうちに“一体、自分はどこの脳みそを使っているんだろう?”と思うようになりました(笑)。

――(笑)。
我人祥太:本編に出てくる小説のタイトルや中身を考えるところにも苦戦しました。例えば『淫乱未亡人に挟まれた僕 もう逃げられないし、もう出ない......』というタイトルも、自分で考えるわけです。これも普段使わない脳みそなので、ドラマの台詞を考えるよりも時間がかかりました。

――山口監督は撮影中に苦労した点はございますか?
山口淳太:撮影日数的に、1日で1話を撮るスケジュールだったんです。ただ、令和をタイトルにしている以上、現場をブラックにはしたくなかった。「こんなの全然令和じゃない」といった事態を避けるべく(笑)、朝は普通の時間に始まり、21時を超えることはほぼなかったです。それどころか、夕方に終わる日もたくさんありました。

――時間短縮のために、どんな工夫をされたんですか?
山口淳太:3台のカメラで1シーンを一発撮りするマルチカム撮影をしました。通常はカット割りを細かく決めて撮影しますが、今回はカメラマンが芝居を切り取ることで、時間を短縮できたんです。これは、キャストやスタッフの皆さんの協力があってこそだと思います。

――本作に携わったことで、官能小説や官能小説編集部への印象は変わりましたか?
石田雄作:原案本を教えていただいた当時、私の中で「官能小説って……」と偏見があったと思います。
しかし取材させていただいた編集部のみなさんは、真摯にお仕事に向き合っていらっしゃいました。勝手な先入観をもっていたことを反省しましたね。

偏見って拭いきれないものですが、『令和に官能小説作ってます』は、偏見と向き合うきっかけになるドラマです。我人さんたちの脚本や山口監督の演出のおかげで、私も自分自身の偏見と向き合うことができました。

山口淳太:『令和に官能小説作ってます』と聞いて、ポジティブに捉える人って実は少ないと考えていて、「お色気なんじゃないか」「嫌だと感じるのではないか」と受け取る人がいると思うんです。この偏見って消せるものではないし、どんな職業でもある程度偏見はもたれるものだとも思っています。

今回は官能小説編集部を舞台にしていますが、描かれていることは普遍的。だからこそ、「どなたでも見られる地上波」でやる意義があるし、さまざまな立場の人に見ていただき、そこで気づきを感じていただくことが大事だと考えています。

我人祥太:僕もこのドラマに取り組む前に“偏見を持っていたんだな”と反省することがありました。どこかで「サスペンスなどの売れ筋ジャンルの小説家さんのほうが文章力があるんだ」と思っていたんです。ただ、官能小説を読ませていただくと、当たり前だけどプロの文章で……。“エロを文字で伝えるって難しい分、描写がすごい”と感じました。文章の世界に上下はなく、「何を書きたいか」の違いでしかない。ものを書く仕事をしているのに、勝手な偏見をもっていたな、と反省しましたね。

――これまで放送されたなかで、それぞれの「推しシーン」を教えてください。
石田雄作:玉川編集長(徳井義実)が家族に自分の仕事を打ち明ける第6話ですね。ここは、我人さんの脚本でも、山口監督が作り上げた映像でも、思わずウルッときました。実際に編集部の方々も「家族に自分の仕事を打ち明けるか・打ち明けないか」は、課題としてあるらしいんです。そういったところを加味している分、非常にいいシーンでしたし、「どんな仕事でも真剣に取り組んで支える人がいる。何も恥ずべきことはない」というメッセージにもなっていると感じました。

山口淳太:池亀さん脚本の第7話は、非常にトリッキーな回で、17分間カメラを止めることなく、長回しに挑戦しました。メタ的視点にはなりますが、もともとコスプレイヤーの桃月なしこさん、お笑い芸人の徳井さん、セクシー業界にいらっしゃる隣人さん役の八木奈々さん……と、「さまざまな業種の方が、長回しで偏見と戦う姿」がとてもエモかったです。すごく熱い回でしたし、ドラマ好きな方でも、間違いなく「他で見たことのないもの」が見られると思います。

石田雄作:第7話は、キャストの皆さんも印象的なシーンで挙げられる回です。30分の地上波深夜ドラマで、ワンカット長回しという臨場感をぜひ味わっていただきたいですね。期間内であれば、TVerの見逃し配信もありますし、DMM TVでは独占見放題配信中です。

我人祥太:僕は隣人さんのシーンが好きです。「文字で画を伝えるドラマ」なんだけど、あそこでは映像の良さも感じられるんです。「映像で伝えたい人」と「文字で伝えたい人」がぶつかり合うことなく、共存しているし、それぞれの矜持も感じる。ただの刺激的な作品ではないこのドラマだからこそ、あのシーンには「お色気を超えた何か」を感じるんですよね。

――本作もいよいよ大詰めです。今後の見どころを教えてください。
石田雄作:第1〜5話は、コメディーや官能小説あるあるを詰め込みましたが、7話以降はよりドラマらしくなっていて、「普通ってなんだ」「偏見とは?」を感じる骨太な内容となっています。このドラマを通して、ものづくりや仕事への向き合い方について考えていただくきっかけになれば、と思っています。

山口淳太:TVerでは第1〜3話まで据え置き配信をしていて、どこから入っても追いつく設計となっています。あまり怖がらず(笑)、これを読んでくださった方が少しでも興味を持っていただけたらうれしいです。
あと、自分の作品が携わる作品の脚本を読んで、涙を流すという経験を初めてしました。最終話では、1回目泣いて、“何かの間違いかもしれない”と思って2回目読んだら、また泣いたので、“やっぱり感動的なんやな”と(笑)。それほど素晴らしい脚本だったので、楽しみにしていただきたいです。

我人祥太:石田さんのお話を聞くと、今後シリアスな物語になると思われるかもしれませんが、相変わらずバカなこともやっています(笑)。

石田雄作:そうですね(笑)。

我人祥太:コメディーとシリアスのバランスがうまくとれた展開になっているので、構えず気軽に見ていただきたいですね。ご覧いただいて、何か感じていただければ幸いです。