島根県の公立高校一般入試の開始を待つ受験生=2025年3月5日、松江市奥谷町の松江北高校
島根県の公立高校一般入試の開始を待つ受験生=2025年3月5日、松江市奥谷町の松江北高校

 縁のある子どもの名付け親を頼まれ「かさね」に決めた松尾芭蕉が、俳句ではなく歌を詠んだ。<いく春をかさねがさねの花ごろも しわよるまでの老いもみるべく>。春を重ね、重ね着の花衣にしわが寄るように、その子が年を取り、しわが寄る老いまで見届けようという意味だ。

 昨年、鳥取県高校入試の国語の問題で扱われた。大人にも響く名歌だ。学問も受験の際だけではなく、芭蕉の歌にあるように、人が老いるまでたしなむものだと思う。

 かつて子どもの学力低下について取材した際、関係者から「高校入試の競争が緩いから」という意見をよく聞いた。運動会の徒競走で順位を付けず競わせない教育現場の姿勢とセットで問題視されることも多かった。競争で伸び、競争がないと机に向かわないという理屈。だが学問は本来、音楽や美術のようにライフワークの領域にあるべきものだ。対して競技スポーツは他者と競い合うもの。一緒にすると誤解する。

 島根県教育委員会が2026年度公立高校一般選抜の出願状況を発表した。全日制の競争率は過去最低の0・81倍。1倍未満は22年連続。もはや競争はない前提で、果てなき学びの喜びをどう教えるかが問題だ。

 わが身を振り返ると、大学入学から半年後に改めて入試問題を解くと得点が半減していた。真の学力があれば著しくは落ちないはず。受験仕様の付け焼き刃の知識にがくぜんとした。(板)