コメディアンの萩本欽一さんはテレビ番組のディレクターにヒットの秘訣(ひけつ)を問われ、一言だけ答えた。「ヒントは『遠い』と『つらい』だ」。ディレクターは頭を巡らせ、言葉を形にした。
生まれたのは日本テレビの『世界の果てまでイッテQ!』。出演者が各国でロケを行い、体を張ってミッションに挑むシンプルな番組だが、日テレを代表する長寿番組となった。人里離れた家を訪ねるテレビ朝日の『ポツンと一軒家』も同じ。遠方に足を運び、出たとこ勝負のロケを行う点で共通する。
物事は時に回り道を選んだ方がうまくいく。魚を取りたければ山で木を切り出して船を造り、網を用意する方が獲物に出合う確率が増す。利益を追求しない会社が利益を上げたり、お金に無頓着な人が富を得たりするパラドックス(逆説)は少なくない。
間もなく新年度を迎える。心機一転、仕事や勉強で直ちに結果を残したいと思う人も多かろう。だが、始めから終わりまで真っすぐ歩ける人はいない。どこかで思い悩み、挫折する。欽ちゃんは「いろいろ考えた先に物語が生まれ、そんな物語に人は心を動かされる」とする。
欽ちゃんは運の法則についても一家言を持っている。その一つが「損から入ると運がたまる」。遠く、つらい損の道の先に幸運が背中をトントンとたたいてくれる。無駄がいとわれ、すぐ答えを求められる現代こそ遠回りの美学を実践したい。(玉)














