ロンドンのオークションに出品された、バンクシーの「少女と風船」=2007年2月(ロイター=共同)
ロンドンのオークションに出品された、バンクシーの「少女と風船」=2007年2月(ロイター=共同)

 「知らぬが仏」と「言わぬが花」。語感の似たことわざだが意味は異なる。前者は、実情を知れば腹が立つことも、知らなければ怒ることもなく、仏のように穏やかでいられるということ。後者は、全てを言い尽くさない方がかえって趣や値打ちがあるという趣旨で使う。

 その意味では後者が当てはまりそうだ。英国を拠点に活動する正体不明の路上芸術家バンクシーの正体を特定したとロイター通信が伝えた。18年前に大衆紙が報じた英南西部ブリストル出身の50代前半の男性だという。

 バンクシーといえば、戦争や権力乱用を批判するメッセージ性のある作品を、建物の壁などに描いているのが特徴。ロシアによるウクライナ侵攻開始後も、同国で戦争を批判するメッセージを込めたような複数の作品が見つかっている。

 鳥取県は今月30日に開館1周年を迎える県立美術館(倉吉市駄経寺町)の新たな目玉として、バンクシーの作品取得を目指している。とはいえ、正体不明の神秘性がなくなれば、話題性も薄れてしまいそう。まさに「言わぬが花」だ。

 バンクシーならどんな作品を残すだろう。米国がイスラエルとともに、イランへの攻撃を開始して3週間が過ぎた。原油価格高騰の影響で、山陰両県でもガソリンの小売価格が過去最高値を更新。関連製品などの値上げも予想され、家計には大きな痛手となる。とても「知らぬが仏」とは見過ごせない。(健)