東京・新宿から西武新宿線で3駅の中井駅。新宿区とは思えないのんびりした駅前商店街に店を構えるのが、1957年創業の伊野尾書店だ。週刊誌から漫画、学習参考書、料理のレシピ本、ちょっとした文具まで幅広くそろう駅前書店は、その多くが姿を消した。伊野尾書店も例外ではなく、今年3月末で店を閉めることになった。

 店内でレスラーが闘う「本屋プロレス」や、店先で参加者が野宿する「野宿書店」、出版社の編集者らが自社の本を持ち寄って売る「本の産直市」などさまざまなイベントで出版業界では知られる存在だった。だが、父親から店を継いだ2代目の伊野尾宏之さん(51)は「非日常のイベントで本を買ってもらうことはあっても、本を買う行為そのものが日常ではなくなった」と語る。

 書店が閉店すると聞けばSNSでは惜しむ声が尽きない。書店が守ってきた活字文化が危うい…と言いたくなるが、伊野尾さんは「商売ですから、お客がいなくなればやめるのが普通です」ときっぱり。書店に通うことはもはや“非日常”なのだ...