政府は28日、19都道府県に発令中の新型コロナウイルス緊急事態宣言と8県のまん延防止等重点措置を期限の30日で全面解除すると決定した。解除後1カ月かけて、飲食店の営業時間延長や酒類提供の解禁といった行動制限緩和を実施。感染状況を見てさらに緩めるかどうか判断するが、宣言再発令の場合でも、ワクチンが行き渡れば医療体制の確保と経済活動の両立は可能とみて、規制は強化しない方針だ。
全面解除は新規感染者の減少傾向や医療の逼迫(ひっぱく)度改善を受けて菅義偉首相が表明し、記者会見で「専門家から示された基準を満たしており、解除を判断した。これから新型コロナとの闘いは新たな段階を迎える」と述べた。緊急事態と重点措置が全国のどこにも出ていない状況になるのは4月4日以来。経済活動の正常化に大きくかじを切るが、制限緩和で感染が再拡大した場合、判断の是非が問われそうだ。
政府は緊急事態と重点措置の全面解除決定に合わせ、感染対策の指針「基本的対処方針」を改定した。緊急事態が解除された地域の飲食店の営業は、感染対策が十分との第三者認証を受けていれば夜9時まで、それ以外は夜8時までを基本とした。実際に酒類提供を認めるかどうかは知事の判断に委ねた。重点措置から外れた地域の飲食店は制限がなくなる。
スポーツやコンサートなどのイベントの入場者は緊急事態、重点措置のいずれの地域も最大5千人までだったが、最大1万人とする。
こうした制限は新型コロナ対応の改正特別措置法に基づき、強制力を持つ命令や罰則のない一般的な協力要請として実施する。必要な対策は感染者数がステージ2(漸増)相当に下がるまで続けるとした。
人の移動は、手洗いやマスク着用といった基本的な感染防止策の徹底を前提に、都道府県をまたぐ帰省や旅行、出張を認める。受験生のワクチン接種が進むように配慮し、大学や高校などの入試は予定通り実施する。
政府は、感染拡大で緊急事態を再発令する事態になっても、引き続き飲食店の夜9時までの営業や酒類提供は認める考えだ。5人以上の会食やイベントの入場制限の撤廃も可能とみている。その際は、ワクチンを2回接種済みであるか、検査陰性のいずれかを示す証明書がある人は行動制限の対象にしない「ワクチン・検査パッケージ」という仕組みを活用する方針で、10月に全国各地で実証実験を行う。