2020年12月に亡くなった島根県津和野町出身の画家、安野光雅さんの第3期追悼展が安野光雅美術館(津和野町後田)で開かれている。代表作の一つ「繪本(えほん) 三國志(さんごくし)」の原画が目を引き、技法や画材にこだわった安野さんの創作活動がうかがえる。12月8日まで。
安野さんは古典文学の中でも特に好きだった三國志の画集制作を思い立ち、2004年から4度、中国へスケッチ旅行に出掛けた。少しでも中国の雰囲気に近づけようと、現地の筆や墨を買い、当時の武具や民俗資料などの提供を受けながら制作に励んだ。
第3期展の「繪本 三國志」コーナーは07年3月から08年10月にかけて雑誌で発表された作品の原画や拡大パネル計93点を展示。蜀の諸葛亮と知略を競った魏の司馬懿(しばい)が勢力を築いていた陝西省・漢中の風景を描いた「漢水流光(かんすいりゅうこう)」は、中国の蔡倫紙を使った。地元の絵の具や落款印を用いた作品もあり、安野さんの熱い思いが伝わる。
福原京子学芸員は「現地で感じた自然や文化にも触れ、表現力豊かな安野先生の作品から、さまざまな楽しみ方を見つけてほしい」と話した。
追悼展は2022年3月9日まで4期にわたり開催。11月6日には追悼イベントを開く予定という。開館時間は午前9時~午後5時で木曜休館。入館料は一般800円、中高生400円、小学生250円。 (石倉俊直)