9月12日、鳥取県南部町であった自民党の赤沢亮正内閣府副大臣(衆院鳥取2区)の国政報告会。4月に発令された新型コロナウイルス緊急事態宣言の7回目の延長が決まった直後、東京からリモート参加した赤沢氏に対する支持者の意見も、時折、厳しいものが交じった。
「有権者には政治不信の声がある。現状をどう考えているのか」と質問が飛んだのに対し、コロナ対策の中枢にある赤沢氏は「批判は真摯(しんし)に受け止める」と述べた上で、こうも言った。
「国会議員が都道府県をまたぐ往来をしているから私たち(国民)も往来していいんだと。そんな志が低くていいのですか」
都会地で人の流れが思うように抑えられず、感染拡大の局面が繰り返される状況が背景にあっての発言だったが、国民の協力を得られない原因を、「相手」に求めるような言葉に、いら立ちが見て取れた。
▼宣言中に飲食
日を追うごとに、政府の呼び掛けに国民が応じなくなっている。その原因は国民一人一人の自覚なのか。
収束という「結果」が出せない中、自衛を呼び掛ける側の説得力の欠如も、不信感を増大させてはいまいか。
感染拡大の「第3波」のまっただ中の今冬、緊急事態宣言中に東京・銀座のクラブで与党である自民党と公明党の衆院議員4人の飲食が判明した。
公明党本部はすぐさま地方議員に、大人数や深夜営業店舗での飲食禁止を通知した。
党島根県本部代表の遠藤力一県議は「国会議員が守っていないのに何を言っているんだ、と反発があった」と振り返る。
加えて、菅義偉首相も東京五輪の有観客開催や、観光支援事業「Go To トラベル」など看板政策を打ち出したこだわりが、感染防止策との矛盾を容易に想起させ、人流抑制への理解が得られにくくなった。
山陰両県民は、とばっちりを受ける立場。過去最多を更新した島根の8月の感染者数629人の4割は県外との往来が関連する。感染は都市部で燃え上がり、地方に飛び火した。
▼逆にマイナス
そもそも、打ち出す政策うんぬんと言う前に、森友・加計学園や政治とカネを巡る問題で政治家自身への不信は増幅している。
9月29日に誕生した自民党の岸田文雄総裁は「(国民の声を)聞く力」が持ち味だと自認する。
ただ、1日に発足した新執行部には、過去に建設会社からの金銭授受問題があった甘利明氏が幹事長に就任するなど、言動が一致しているとはにわかには言い難い。
総裁選で、島根県選出の自民党国会議員4人が「岸田支持」でありながら、体質改善を期待して、河野太郎氏に1票を投じた党木次支部の吾郷広幸支部長(73)は「政治への不信感が総裁選で払拭(ふっしょく)できると思ったが、逆にマイナスになった」とため息をつく。
政治家が自ら襟を正し、説明を尽くす姿勢を持ち続けなければ、国民の不断の協力が不可欠なコロナ対策はいつまでもおぼつかない。