国土交通省が今年1月1日時点の公示地価を発表した。全国平均では商業地は7年ぶり、住宅地が5年ぶりに下落に転じた。商業地のマイナスは0・8%で、大阪圏1・8%、名古屋圏1・7%、東京圏1・0%と三大都市圏の下落率が大きかった。主因は新型コロナウイルス禍と言える。

 山陰両県の全用途の平均変動率は島根がマイナス0・9%、鳥取がマイナス1・0%で、下落幅は両県ともに9年ぶりに拡大した。

 昨年7月1日現在の都道府県地価(基準地価)調査と共通する地点の動向を半年ごとに見ると、昨年前半は、最初の緊急事態宣言が4月に発令され下落したものの、後半は飲食や旅行を促進する「Go To キャンペーン」もあり商業地がおおむね横ばい、住宅地がプラスまで戻している。

 昨年は感染防止を理由とした人の移動制限や時短営業によって観光業や小売業、飲食業が大打撃を受けた。訪日外国人観光客が多く利用したドラッグストアなどがある大阪・道頓堀、歓楽街の東京・歌舞伎町、接待を伴う飲食店のある東京・銀座などの下落が目立つ。

 一方、日常生活に必要な店舗などがある地域、オフィスやマンションの需要がある地域、再開発やインフラ整備があった地点などでは上昇した。

 今回の落ち込みは、リーマン・ショック後、金融システムや不動産証券化への不安が広がり土地の購入者が減った2009年、10年に比べると小さい。コロナ禍が収束し人の移動が戻れば上昇に転じる可能性もある。

 地価の下落は固定資産税など自治体の税収減につながる。自治体としては地価の安定、できれば上昇させる施策の導入が重要だ。コロナ対策の充実に加え、地方ではテレワークを活用して人口の増加につなげたい。

 公示地価では、別荘地で知られる長野県軽井沢町と静岡県熱海市が移住を目的とした需要の増加もあって上昇した。新幹線の駅があり東京への通勤も便利な点が評価されたとみられる。

 総務省の20年の人口移動報告では、東京など1都3県は25年連続で転出より転入の方が多い転入超過だが、その数は3割減り9万9千人。東京都に限ると転出超過になる月も多く、人口流入は6割以上減って約3万1千人だった。「3密」を避け、テレワークしやすい住宅を探して東京都から周辺3県に移っている人が多いとされる。

 また国交省の20年度調査では雇用型就業者のうちテレワーク実施者は2割弱と前年の2倍になった。1回目の緊急事態宣言が出された時期は1都3県では3割を超える実施率だった。

 企業の本社機能を地方に移転させることは難しいが、企業がテレワークを認めれば、社員が地方に住むことは可能だ。東京一極集中の是正を掲げる政府は、東京の混雑解消と地方創生の観点から引き続き企業にテレワーク推進を求め、自治体もシェアオフィスなど受け皿づくりを進めるべきだ。

 地価の維持には、公共事業や民間取引を進めるため所有者不明土地の発生を防ぐことが必須だ。登記簿で所有者の所在が不明の土地は全国で2割との調査結果もある。

 団塊の世代からの相続が今後増えるだけに、今国会に提出された土地の相続登記を義務付ける不動産登記法改正案などの成立も急ぎたい。