全日本刀匠会顧問で島根県邑南町出身の刀匠・三上貞直(さだなお)(本名・孝〓(徳の旧字))さん(66)=広島県北広島町=が、これまでに手掛けた作品を紹介する個展を広島市内で開いている。日本屈指の技で作られた刀の輝きと芸術性が来場者を魅了する。会期は17日まで。
三上さんは邑南町布施の鍛冶屋に生まれ、高校卒業後、奈良県の名刀工・月山貞一氏(人間国宝)に弟子入り。5年間の修業を経て、1980年に北広島町で独立。島根県奥出雲町大呂の日刀保たたらで生み出した玉鋼で刀を作り続けてきた。
最も権威のある「新作刀展覧会」(現・現代刀職展)で最優秀の高松宮賞を2度獲得するなど受賞歴も多く、会場に選んだ頼山陽史跡資料館には刀や太刀、槍(やり)など35点を展示。評価を高めるきっかけとなった南北朝を代表する豪快なスタイルの刀や、公家が携える細身の刀などが制作年代の順に並び、作風の移り変わりを見ることができる。
欧州のポーランドで2013年に取り組んだ公開鍛錬や、日刀保たたらに従事していた様子が分かる写真も展示する。作品の多くは購入者から改めて借り受けており、三上さんは「一人の刀鍛冶がここまで来るのに多くの方に支えていただいた」と話す。
個展は北広島町に道場を設けてから40年の節目だった昨年に開く予定だったが、新型コロナウイルスの影響で延期していた。9日午後1時半から三上さんによるギャラリートークがある。
開館時間は午前9時半~午後5時(入場は午後4時半まで)。月曜休館。入館料は一般300円、大学生・高校生220円、小中学生150円。 (新藤正春)