大手百貨店が、店舗とデジタルを融合した売り場を相次ぎ導入している。若者に人気のインターネット通販を誘致してサンプル商品を陳列。客は電子商取引(EC)サイトから買うため「店頭で物を売らない店」とも称される。新型コロナウイルス禍で業績が低迷する中、若者を顧客に取り込み経営基盤の強化を図っている。
明るい店内に並ぶ、環境に配慮したおしゃれな化粧品や洋服―。スマートフォンでQRコードを読み取ると、決済ページに進むことができた。東京駅に隣接する大丸東京店で「D2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマーの略)」と呼ばれるネット通販ブランドの売り場が6日オープンするのを前に、報道陣向けの内覧会が5日開かれた。
D2Cは本来、店舗を持たず小売店も介さずに自社のECサイトで販売する業態だ。大丸の売り場では、サンプルを見た客がその場でD2C各社のサイトに接続して買い、商品は自宅に配送される。大丸はD2C側から出品料を受け取る。
消費者には、直接手に取って確かめてから購入できる利点がある。主な顧客が中高年の百貨店にとっては、デジタルを駆使して若者向けの新ビジネスを立ち上げるのが喫緊の課題だった。大丸松坂屋百貨店の大西則好DX推進部長は「若いお客さまに興味を持ってもらえる取り組みを実施していきたい」と意気込む。
そごう・西武は9月、西武渋谷店に約700平方メートルの売り場を設けた。50社が出品し、ECサイトでの購入の他に店頭受け取りも可能だ。ファッションビルを展開する丸井グループも、D2Cと連携した店舗運営を進めている。
百貨店業界の関係者は「デジタル化が遅れた百貨店は多い。D2Cとの協業がメインの事業になるのは難しいが、収益改善という点では将来性があると思う」と語った。