室内遊びをする、おぐに保育園の園児たち。同園は定員割れが続く=浜田市金城町小国
室内遊びをする、おぐに保育園の園児たち。同園は定員割れが続く=浜田市金城町小国

 任期満了に伴う浜田市長選と市議選が10日告示される。ダブル選を前に、減少する出生数、浜田歴史資料館(仮称)建設、基幹産業である水産業振興の三つの視点で市政課題を追う。

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 室内用の滑り台やボール遊びに夢中の園児を横目に、おぐに保育園(浜田市金城町小国)の山崎央輝(ひろき)園長(49)は園児数の推移をまとめた書類に目を落としてつぶやいた。「戦略を立てないと生き残れない」

 保育園は社会福祉法人が運営し、現在の定員20人に対し園児数は16人。待機児童対策に力を入れる市の求めに応じ、2010年度に定員を30人に増やしたが、15年ごろから定員割れが常態化したため、18年10月に20人に戻した。

 市の周辺部に位置し、中心部に送迎バスを走らせるなど園児の確保策を進めてきた。ただ、市街地でも少子化の流れは止まらず、各保育園で子どもの争奪戦が激化。認定こども園を含む市内27園のうち、16園が定員割れしている。

 市保育連盟の会長を務める山崎園長は、厳しい経営環境に陥っている運営法人は少なくないとし「今後は各法人同士の合併もあり得る」と指摘。園の統廃合に発展しかねない状況だと危機感をあらわにする。

 

対策成果出ず

 市は25年度までの10年間を期間とする最上位計画「総合振興計画」で、14年度に442人だった出生数について、最終年度に400人を維持する目標を掲げた。

 対して20年度の出生数は前年度比13・5%減の296人と過去最少を更新し、300人台を割った。

 少子化対策として、保育料の軽減、子どもの医療費や不妊治療費の助成、出産と育児に関する相談機能の強化などを打ち出し、年間約11億円の予算を確保してきた。家計を助け、子育て環境を整える効果はあるものの、出生数に結びつく十分な成果が出ているとは言い難い。

 市が誇る「待機児童ゼロ」は、出生数の減少によって実現している側面がある。

 

目標から乖離

 右肩下がりの年間出生数がまちづくりに与える影響は大きい。

 三隅町の井野地区は00年度に中学校、12年度には小学校が閉校。地域の行事は減り、公共交通網は縮小した。

 地元有志が「まちづくり推進委員会INO(いの)」を立ち上げ、定期市の開催などで地域活性化に取り組むが、若菜洋子事務局長(66)は「地域にとって姿が見えるだけで力がもらえるのが、子どもの存在。子どもが減れば減るほど、まちづくりは厳しくなる」と思い悩む。

 出生数の推移は、子育て施策だけではなく、教育や福祉・医療、若年層の働く場の確保など、幅広い施策が関わり、まちの総合力を示すバロメーター。このままでは、目標から乖離(かいり)するばかりだ。