末期の食道がんと闘いながら、詩を書き続けている男性がいる。松江市に住む遠所秀樹さん(65)。高校生で始めてから作詩一筋で歩んだ人生に寄り添った家族は、少しでも、詩を読んで心に響く人がいてほしいと願う。(古瀬弘治)
遠所さんはフランス語を独学で学び、「近代史の父」とも呼ばれるシャルル・ボードレールや、アルチュール・ランボーら、フランスの詩人に強い影響を受けた。
同人誌への投稿を続け、これまで『労・働・者』(1986年)と『僻境(へききょう)』(2016年)の2冊の詩集を出版した。
近著の『僻境』は同人誌に30年寄稿した作品を練り直して45編にまとめた。
序文の中に「ひっきょう私の書いてきたものと言えば、僻境の中でのつぶやき、ひとり言。都も知らず、旅も知らず、つきあいも知らない者に人に伝えるべき何かが書けるのだろうか。土産話のひとつでも差し出すことができるだろうか」とあるように、孤独の中で言葉をつづってきた。
「無理はしない。自然が一番」が遠所さんの口癖という妻・三津江さん(66)と長女・大森三樹さん(42)。2人によると、末期の食道がんと宣告された遠所さんは、病床に伏せながら、作詩活動を続ける。
大森さんは「(作詩にふける父のことを)理解してあげられなかった部分もある。だからこそ、少しでも父の詩が心に響く人がいればうれしい」と話す。
三津江さんは「命をかけて作り続けてきたものである詩集が誰かの心に響いてほしい」と願う。
詩集についての問い合わせは大森さん、電子メールlove.tmrt94@gmail.com