倉吉市在住で今春、米子東高校普通科に進学した男子生徒が、市の通学費助成制度を見直し対象とするよう市議会に陳情した。昨年度に創設された制度は原則、鳥取県中部の高校への通学が対象。中部にない学科など特別な事情がない限り、中部以外は対象にならない。東部、西部の高校への流出を防ぎたいという狙いがある。男子生徒は「各校特有のカリキュラムがある」と助成で差をつけて進路を狭めないよう訴える。
陳情したのは1年の松山竜輝さん(15)。普段から「市議会だより」を読むなど市政や市のまちづくりに関心を寄せていた。
米子東高普通科への進学は、重点的に理数教育をする「スーパーサイエンスハイスクール」(SSH)に指定されていることが決め手だったという。実際、県内の公立高校で指定されているのは同校と鳥取西高校の2校しかない。
通学はJR倉吉駅から米子駅まで鉄道を利用。6カ月の定期代は6万1420円で、月額換算約1万円となる。月額7千円を超える通学費を助成する市の制度を活用しようと8月12日、申請したところ、認められなかった。
倉吉市内では毎年約700人が中学を卒業するが、東部や西部のスポーツ強豪校や進学校に進む例が近年増え、市教育委員会を悩ませる。多い年は70人以上が東部、西部に進学する。小椋博幸教育長は「遠くまで行かなくても中部の高校で学べる。条件を撤廃すれば生徒の流出を助長しかねない」と理解を求める。
陳情は「各校特有のカリキュラムがあり、得られる学びは違う。各校の特色を理解しないまま対象を制限されては困る」と指摘。中部の高校が寂れる危機感は共有しているとした上で、魅力化を含めた存続策を市で検討し、県に提案するよう求めた。松山さんは「問題にしっかりと向き合い、議論してほしい」と願う。
現在、9月定例市議会の会期中で、陳情は10日の教育福祉常任委員会での審査を経て、15日の本会議で採決される予定。制度は創設時に議会が「選択肢を狭める」と難色を示し、対象校が広げられた経緯があり、議会の対応が注目される。 (福間崇広)