法医学の専門家が課題を話し合う日本法医学会学術中四国地方集会が16日、出雲市塩冶町の島根大医学部であり、和歌山県立医科大法医学講座の近藤稔和教授(53)が講演した。高齢者の孤独死や新型コロナウイルス関連の死亡疑い例などに、社会的に注目が集まっているとし、原因究明に法医学が果たす役割の重要性を説いた。
近藤教授は、和歌山県立医科大での解剖事例のうち孤独死が25%に上ると紹介した。家族や近所との関係が疎遠の場合、死後1週間以上たって発見されるケースが多く「独り暮らしの高齢者に行政がどう関わるかが課題だ」と分析した。
また、新型コロナの感染が疑わしい遺体やワクチン接種後に死亡した人の例も紹介した。コンピューター断層撮影(CT)検査でコロナ特有の肺炎症状が疑われた事例では、解剖で死因が別の要因と判明したこともあったといい、CT検査のみに頼った死因判断の危険性を指摘した。
最後に「犯罪死の解剖だけでなく、公衆衛生の視点からの死因究明が求められている。今後われわれの果たす役割は大きい」とまとめた。
学会に属する医師らによる研究事例の発表もあり、ウェブも含め約100人が参加した。 (平井優香)