若者が着物に触れる機会を増やそうと、呉服業界で新たな取り組みが進んでいる。家族だけの成人式で晴れ着姿を披露できたり、流行している定額利用サービスを通じて着物への親近感を高めてもらったりして、需要を促す狙いだ。
▽笑 顔
「成長した姿を、お世話になった人に見てもらえてうれしい」
ピンクを基調とした振り袖姿の野口紗那さんと、赤いトーンの怜那さんの双子が笑顔で話す。8月中旬、20歳になるのを記念し、両親や祖父らと開いた「家族のための成人式」の一こまだ。
呉服卸販売のいつ和(新潟県十日町市)が東京・銀座の「観世能楽堂」で催した。野口さんら7組の親子が参加。厳かな舞台の上で子どもが親に感謝の言葉を伝え、全員が満面の笑みで記念の写真を撮った。
新成人は通常、自治体主催の成人式に参加する。ここで振り袖や紋付きはかまを着ても、その後は遠ざかることが多い。
「当日は一緒の時間が限られる。ならば家族だけの式があってもよい」。担当したいつ和の中西昌文氏は話す。
▽着物離れ
矢野経済研究所によると、2020年の呉服小売りの市場規模は2380億円と前年比1割近く減る見込みで、着物離れが進む。若者には、着物は特別な場面での装いとの意識が強く、うまく利用者を増やせていない。
いつ和は17年から家族だけの式を始めた。事前に準備を重ねてオリジナルの式を提供。親が着付けを学び、娘を振り袖姿にすることも。紋付きなどに触れれば、将来の需要にも期待ができる。
▽便 利
グリーンライフ(大阪市)の「わたしの和だんす」は、定額利用「サブスクリプション」サービスだ。着物や長じゅばんなどが自宅に届き、返却すれば翌月は別のものを試すことができる。
月3300円のコースでは、100種類以上の着物が選べる。ポリエステル素材のため着付けの練習や外出で着る人に便利だ。月6600円のコースには正絹の着物もある。
京都きもの友禅は、スマートフォンで着付けを学べるオンラインサービス「タシナミ」を始めた。初級から資格を目指すコースまで5種類。レッスンでは講師が画面越しにマンツーマンで教え、質問に応じてくれる。















