島根1、2区は自民党が圧勝した。新型コロナウイルス禍と人口減で地方衰退への懸念が加速する中、県政界は故竹下亘氏の引退、死去で大転換時代に入る。2人が果たすべき使命や責任は今まで以上に重い。
島根2区で初当選した高見康裕氏の勝因は、竹下氏から引き継いだ地盤だけと言っても過言ではない。知名度不足で浸透がままならない上、2019年知事選の保守分裂で、地方組織のしこりが依然残り、前回選での竹下氏の得票数から約1万3千票減らした。
旧出雲市内での街頭演説の人出の少なさが象徴するように自民党支持層に竹下氏亡き後の喪失感が漂う。高見氏は次から看板を使えない。約束したふるさと創生を具現化しなければ、地方の疲弊は深刻化する。存在感のある政治家が抜けた穴を全力で埋める働きをしてほしい。
竹下氏の引退で、党の要職や閣僚を歴任した重鎮は島根1区の細田博之氏だけとなり、責任の重さは増す。安倍・菅政権を支えた最大派閥の領袖(りょうしゅう)に対する一定の批判を真摯(しんし)に受け止め、離れた有権者との距離を取り戻す必要がある。
野党は転機を生かせなかった。島根2区に擁立したのは過去に大敗を喫した候補で、議席獲得を目指す迫力に欠けた。立憲民主党と共産党が中心の共闘態勢も有権者の不満の受け皿になりきれず、投票率が低調な一因となった。共闘の在り方の検証が急務だ。
与野党での論戦も深まらなかった。与党からは新型コロナウイルス対応などで募った政治不信を払拭(ふっしょく)する言葉はほとんどなかった。野党も政権批判が目立った。人口減が進む地域は閉塞(へいそく)感が漂う。県民の置かれている状況を直視し、寄り添う姿勢を示さなければ、政治への諦めが広がる。
(政経部・原田准吏)