ワイン貯蔵庫兼ワインカフェに再利用される旧三江線粕渕トンネル=島根県美郷町粕渕
ワイン貯蔵庫兼ワインカフェに再利用される旧三江線粕渕トンネル=島根県美郷町粕渕
鉄道公園となる旧口羽、宇都井両駅での取り組みに一層力を入れようと誓う日高弘之理事長(中央)たち=島根県邑南町下口羽、旧口羽駅
鉄道公園となる旧口羽、宇都井両駅での取り組みに一層力を入れようと誓う日高弘之理事長(中央)たち=島根県邑南町下口羽、旧口羽駅
ワイン貯蔵庫兼ワインカフェに再利用される旧三江線粕渕トンネル=島根県美郷町粕渕 鉄道公園となる旧口羽、宇都井両駅での取り組みに一層力を入れようと誓う日高弘之理事長(中央)たち=島根県邑南町下口羽、旧口羽駅

 江津市と広島県三次市を結んだJR三江線が廃線となり、31日で丸3年が過ぎた。さまざまな物資を送り出した農林業の衰退に人口流出、車社会の発展という逆風にさらされ続けての「ラストラン」だった。3年の歳月を経た今、鉄道公園のオープンやトンネルを使ったカフェの開業など、遺産活用の動きが進む。鉄路88年の歴史の風化を防ぎつつ、人口減少や過疎化に苦しむ沿線地域の活路を開くのか注目される。

 地上20メートルにホームがある旧宇都井駅(島根県邑南町宇都井)、レトロな駅舎が特徴の旧口羽駅(同町下口羽)。両駅が1日、「三江線鉄道公園」として再出発する。両駅舎とホーム、周辺の線路が保存され、列車往来の跡を次代に伝える。

 「廃線を逆手に地域振興のきっかけにしたい」。列車の影も音も消えた後、両駅でトロッコ型車両を走らせ沿線地域の振興に取り組んできたNPO法人江の川鉄道の日高弘之理事長(80)は、気持ちを新たにする。同法人は公園所有者の島根県邑南町から委託され、指定管理者となる。

 2015年に廃線議論が表面化。鉄道の利用促進を図るため、住民有志団体「江の川鉄道応援団」の団長に就いた。廃線決定後は両駅の線路を使った車両運行など、振興につなげる公園化構想を打ち出した。

 トロッコ型車両の試験運行を続けつつ住民や町議会へ説明に回った。町全体の反応は当初、悪かった。沿線地域は合併前の旧羽須美村に限定されていたからだ。「地域のため実現させてくれと説得を重ねた」と振り返る。熱意や試験運行の実績が評価され、今年3月に町議会で承認を得られた喜びはひとしおだった。

 ここからが始まりでもある。口羽、宇都井両駅の間に旧伊賀和志駅(広島県三次市作木町)があり、公園ではない。広島県三次市に働き掛け、3駅一体を実現させるのが夢だ。

 公園化されれば口羽|宇都井間が線路1本でつながる。トロッコ型車両を走らせるスケールは大きくなり島根、広島県境を越えた企画も見えてくる。邑南町の人口は廃線となった18年の1万891人から減り、21年1万337人。地域衰退の危機を感じつつ残った鉄路に希望を探す。         (糸賀淳也)

 三江線の鉄道遺産を活用する新たな試みが、旧沿線で繰り広げられている。旧粕淵駅(島根県美郷町粕渕)に近い粕渕トンネル跡は2021年度、「トンネルカフェ」に生まれ変わる。ワイン貯蔵庫とワインカフェを設け地元食材の魅力を伝えつつ、近隣の観光施設との連携を図る。

 美郷町と、三瓶山東の原にある「石見ワイナリー」(大田市三瓶町)が共同で取り組む。三瓶山麓で醸造したワインと美郷町特産の山くじら(イノシシ肉)、チーズなどを提供する計画。同社の系列会社が運営する。ワインにとって直射日光や急な温度変化は劣化を招く大敵。暗く温度変化が少ないトンネル内は貯蔵に適しているという。

 同社は三江線の旧潮駅近くに3月25日にオープンしたリゾートホテル「石見ワイナリーホテル美郷」(同町長藤)やレジャー施設「カヌーの里おおち」(同町亀村)、複合施設「ゴールデンユートピアおおち」(同町粕渕)を指定管理する。

 トンネルカフェとこれら周辺施設を結ぶ送迎バスを走らせ、観光客の町内循環を促し、滞在型リゾートを目指す。〓(木ヘンに久)村一弘総支配人は「地域のシンボルだった三江線のトンネルを、人が集い飲食を楽しめる場にしたい」と話す。

        (佐伯学)