島根半島の両端から約120年にわたり航路を照らしてきた美保関、出雲日御碕両灯台がそろって重要文化財の指定を受ける見通しとなった。観光振興などに活用してきた地域の関係者は、なお地域のシンボルとして輝き続ける灯台を今後も守り抜く思いを新たにした。 (中島諒、森みずき)
19世紀末の1898年に造られた美保関灯台。灯台に隣接し、かつて灯台看守の宿舎として使われた建物は現在も「美保関灯台ビュッフェ」として年間約1万人が訪れる。ビュッフェの三角邦男オーナー(82)は「大工や石材の運搬に多くの地元民が関わったと聞く。丈夫な石造りだからこそ、ここまで長く残った」と胸を張る。
美保関エリアには、美保神社本殿、仏谷寺仏像と2件の重文があり、文化の豊かさをうかがわせる。松江観光協会美保関町支部の安達修一事務局長(60)は「各文化財を結び付けてPRしたい」と今後の構想を描く。
島根半島西端の出雲日御碕灯台は日本遺産「日が沈む聖地出雲」の構成文化財として位置づけられ、重文指定でさらに価値が高まった。
日御碕地域の魅力発信に率先して取り組んでいる住民団体「ミサキどっとCome(コム)」の吉田勝俊企画担当(36)は「高さの存在感もあり、中を自由に眺めることもできる体験施設としても楽しめる灯台だ」と太鼓判を押す。
展望台から広がる日本海の景観は多くの観光客を魅了しており「地元の人たちが大事にしてきた灯台の価値があらためて認められ、うれしい」と喜んだ。
両灯台は「ロマンスの聖地」として活用する「恋する灯台」や「世界の歴史的灯台100選」に認定されるなど、きょうだい灯台としての結び付きも強い。
出雲観光協会の稲根克也事務局長(61)は同時指定を歓迎し「出雲、松江両市でタッグを組んだ広域的な観光PRが一層期待できる。まずは県内で両灯台を地元の宝として共有していきたい」と話した。