政府は原油価格の高騰を抑制するため、米国などと協調した初の国家石油備蓄放出を決めた。元売り業者への補助金に続く第2弾で、新型コロナウイルス禍からの経済活動の回復に原油高が水を差す事態を防ぐ狙いだ。

 7~9月期の国内総生産(GDP)が物価変動を除く実質で2四半期ぶりのマイナス成長となるなど日本経済にはコロナ禍の影響が色濃く残る。そこを原油高に襲われた形だ。

 経済への圧迫を縮減するためには一定程度の政策は必要だ。その意味では今回の対策の重要性は認めるが近視眼的になってはならない。長期的な観点から私たちの立ち位置をいま一度確認することが求められる。脱炭素化社会への過渡期にあるという現実の中で今回の原油高をどうとらえるのか。

 供給量が増えれば、価格は下がる効果が見込めるが、石油輸出国機構(OPEC)など産油国に対する増産要請一辺倒は正解ではないだろう。

 世界全体で化石燃料をできるだけ使用しないように努力しようと申し合わせている。原油高に伴う痛みをとりあえず供給増によって取り除こうという意図は分かるが、徐々に脱炭素にシフトしていく中で、それと整合性の取れた新たな対応を模索していくべきではないだろうか。

 原油は米先物価格が10月に1バレル=80ドル台と約7年ぶりの高値を付け、それ以降高値圏にとどまり、ガソリンの値上がりなどが企業活動や日常生活を直撃している。

 備蓄放出には日米に加え中国、英国、韓国、インドが参加するが、最大消費国の米国の放出量は今後数カ月で5千万バレル、3日分の消費量に満たない量だ。日本の備蓄は国家、民間合わせ消費量の242日分相当の計7425万キロリットル。このうち国家備蓄から数十万キロリットルを出す。消費国の結束を示す意味はあるかもしれないが、相場に影響を与え得る量とは考えにくい。

 今回は、コロナ禍からの世界経済の回復に伴う原油需要急増に生産が追いつかない事態が相場高騰の出発点になったが、意図的に高値を維持しようという産油国の思惑もうかがわれる。今後も一定の高値圏が続く可能性はある。

 政府は、元売り業者への補助金は12月から来年3月までの「時限的・緊急避難的措置」としている。こうした中で、高値が続いていく恐れが否定できないとなれば、高値に対応した企業活動や日常生活を再構築することが求められる。これは長期的な課題になる。

 当面は元売り業者への補助金の効果が焦点になる。しかし需給で価格が決まるガソリン市場に公金を入れて価格を統制しようということ自体が無理筋ではないか。補助金で卸売価格を引き下げたところで小売価格がそれに機械的に連動する保証はない。小売業者は仕入れ値のほかに人件費などのコストを勘案して売値を決めるはずだ。広く価格抑制を狙うより農漁業、運輸業など直撃を受ける業者への支援を厚くする方が効果的だろう。

 石油備蓄法は放出について災害時などに限定、相場高騰は想定していない。岸田文雄首相は「法律に反しない形で検討した」と述べたが説明不足だ。これまでの放出ではまずは民間備蓄で対応してきた。なぜ国家備蓄なのか。米国に引きずられたとの疑いを禁じ得ない。