メテオプラザ内にあるリラックスルーム
メテオプラザ内にあるリラックスルーム

 松江市美保関町七類の多目的施設「メテオプラザ」が10月下旬、SNS上で突如、注目を集めた。「島根の北端にあるヤバ(ヤバい)スポットです」という写真が添付されたつぶやきに、「現実?」と驚きの声が次々と寄せられた。いん石や宇宙を模した特徴的な外観が関心を呼んだようだ。あらためて施設を訪れてみると、外観からは強烈な個性が伝わり、注目されるのも分かるような気がした。詳しく紹介したい。(Sデジ編集部・吉野仁士)

 

 「何が起こったのかとびっくりした。何の前触れもなかった」。メテオプラザの広報担当で「メテお姉さん」の愛称で呼ばれている宮本奈美さん(48)が振り返る。

 つぶやきは10月21日、出雲市で音楽レーベルの運営に携わる男性が投稿した。島根の魅力発信のため、都市部に住む友人や知人に向け、島根の話題を意識的に投稿しているという。男性は反響について「島根にメテオプラザのように近未来的な(外観の)建築物があるとは知られていないだろうと思った。想像以上に多くの反響があり、行ってみたいという感想が多く、とてもうれしかった」と話した。これからも、島根に関する話題の投稿を続けるそうだ。

 男性のフォロワーが4700人と多かったこともあってつぶやきは拡散され、つぶやきを共有する「リツイート」が530件、共感を表す「いいね」は3532件に上った(11月25日時点)。

10月に投稿されたメテオプラザを紹介するつぶやき。特徴的な外観と内装について触れている

 つぶやきに添付された写真には施設の外観や、カプセル型の健康マシンが並ぶ部屋が写っていた。つぶやきを見た人からは「現実とは思えないな!?」「島根にこんなイカした場所が」「ここで(音楽の)イベントやってほしい」との声が寄せられた。

 

 ▼いん石落下で建設計画変更

 メテオプラザは25年前の1996年にオープン。もともとの計画は92年、隠岐諸島と七類港を結ぶ高速船「レインボー」の就航決定を受けてスタートした。当初はフェリーターミナルや住民向け文化ホールが中心になる予定だった。

 92年12月、近くの民家の屋根を突き破っていん石が落下した。全国のニュースで取り上げられ、当時、大きな話題になった。このため、建設計画は急きょ、いん石を主軸にするよう方針転換。いん石や宇宙関連の展示を楽しめる複合施設になった。施設の外観も変更し、屋根にいん石のようなオブジェが加わり、現在のインパクトのある姿になった。

 オープン直後は、来場者に「未来映画から飛び出した建物のよう」と言われたとか。正式名称は「海の学苑(がくえん)ふるさと創生館」。「メテオプラザ」は愛称で、いん石を表す英単語「メテオライト」から名前を取っている。

メテオプラザの外観。島根の北端にあるとは思えない近未来的な建物だ(メテオプラザ提供)

 美保関町にいん石が落ちたのは29年前。SNS上での大きな反響は、島根県にいん石に由来する大きな建物があることを知らない人が多く、驚かれたとみられる。

 メテオプラザの公式ツイッターでは日頃、天候やイベント情報をつぶやいているが、「いいね」は10~20ほど。統括マネージャーの山形由香里さん(48)は「思わぬところで関心を持ってもらえてうれしい。ぜひ実際に来て展示を見てもらい、宇宙に思いをはせてほしい」と話した。

 

▼宇宙を感じる設備が盛りだくさん

 メテオプラザは島根県と、松江市と合併する前の旧美保関町が建設。総事業費は町史上最大規模の30億円。山形さんが「宝くじ助成金など、あらゆる助成制度を駆使して資金を調達したらしい」と説明する。

 県や町が力を入れただけあって、外観は島根半島の漁村の中で圧倒的な存在感を放つ。日本海のように波打つような形状の屋根の上に、いん石を模した丸いオブジェと宇宙に向けて伸びるメテオタワーがそびえる。

 縦幅27メートル、横幅は104メートル。高さはタワーを含むと46メートルにもなる。松江市の中心部から離れた島根半島の海側に特徴ある外観の大規模建物があるとは、県外の人には想像できないだろう。

 館内では珍しい設備が目を引く。いん石のオブジェ部分は本棟の4階に相当し、内部には実際に民家に落ちたいん石の展示コーナーと、高さ約8メートルの巨大な楕円(だえん)スクリーンがある。スクリーンでは、宇宙の誕生やいん石に関する映像が見ることができる。

いん石オブジェの内部にある巨大スクリーン。奥にいる山形さんと比べればその大きさが分かる

 展示中のいん石は、長さ25・2センチ、重さ6・38キロ。いん石からは地球上に存在しない元素「スカンジウム44メタステーブル」が世界で初めて検出された。落下から2カ月後にあった初の一般公開では、会場の公民館に5日間で1万人が押し掛けたそうだ。いん石が民家に落下した例は、全国で他にもあるが、現地で落下したいん石が展示される例は珍しく、多くは国立科学博物館(東京都)や海外の研究機関に保管されているという。

いん石の展示コーナー。メテオタワーの中にあるタワーに守られている

 

民家に落下したいん石の現物。当時は世界初確認の物質が検出された超貴重品だ

 ツイッターのつぶやきにあったリラックスルームは特殊照明の効果で、宇宙と海の絵が壁に浮かび上がる神秘的な空間。リラックスルームの中には未来の世界を感じさせるカプセル型の健康マシン(長さ226センチ、高さ99センチ、幅89センチ)が6台あり、サウナとマッサージの効果に加えて心地良い香りや音楽も同時に楽しめ、まるで宇宙を漂うような感覚に包まれる。

健康マシンが並ぶリラックスルーム。特殊照明で宇宙のイラストが浮かび上がり、幻想的な雰囲気になっている。照明を消すと殺風景な白い部屋に戻る

 このほか、宇宙食として実際に使用されるカレーやアイスクリーム、パンも販売する。館内の至る所に宇宙を身近に感じられる仕掛けがある。

宇宙食の販売コーナー。自宅で食べれば宇宙に行った気分になれる?

 

 ▼いん石落下の家も「大歓迎」

 メテオプラザが再び注目を集め、いん石が落下した民家の家主の松本優さん(85)も「美保関町が注目されるのはとてもうれしいことだ」と喜ぶ。

 松本さんによると、民家に落ちたいん石は土地の所有者の物となるため、松本さんがいん石の持ち主。「譲ってほしい」と、国をはじめ多くの機関から何度も頼まれたが「貴重なものなので地元のために役立てたい」と、メテオプラザへの貸与を決めた。

29年前、いん石が突き破った天井を指さす松本優さん。穴からは屋根裏が見える。さすがに屋根の穴はふさいだが、可能な限り当時のままにしているという。サービス精神旺盛だ

 いん石が上から下へ貫通した部屋は、見物に来る人に向け開放した。天井の一部は穴を空けたままで、いん石が突き破った屋根を見ることができる。松本さんは「いん石が落ちてから10カ月は毎日、人がやって来た」と振り返り、双子の100歳姉妹として人気だった「きんさんぎんさん」や、元宇宙飛行士の毛利衛さん(73)といった有名人も数多く訪れたという。

きんさんぎんさんが美保関町に訪れたことを報じる当時の山陰中央新報。右上には当時の松本さんも載っている

 最近は新型コロナウイルスの影響で訪れる人が減ったが、松本さんはブーム再燃に期待する。「これまでも何千人にいん石の説明をしてきたので、興味を持ってくれた人がいればいくらでも説明する。大歓迎したい」と笑顔を見せた。

 

 12月10日は、いん石落下から29周年を迎える。当日は、メテオプラザのいん石の展示コーナー(入場料は大人500円、中高生350円、小学生250円)が無料開放される。メテオプラザに興味を持った人は、ぜひ一度訪れてみてはいかがだろうか。

 

メモ

 営業時間は展示コーナーが午前9時~午後5時、サウナ(利用料は高校生以上200円、中学生150円、3歳以上100円)は午前10時~午後8時(日、祝日は午後6時まで)、リラックスルーム(利用料は高校生以上1030円)は午前10時~午後6時半(同)。休館日は毎週水曜日(水曜日が祝日のときは翌日)と12月28日~1月1日。問い合わせ先は電話、0852(72)3939。

 メテオプラザは鉄骨鉄筋コンクリート造り4階建ての本棟と鉄骨造り平屋の別棟で構成され、松江市の第三セクター「サンライズ美保関」が管理する。いん石の展示コーナーや500席の文化ホール、隠岐航路のフェリーターミナルに加え、サウナやカプセル型の健康マシンが使えるリラックスルームも備わる。延べ床面積は6084平方メートル。