10年ぶりに東京電力福島第1原発が立地する福島県大熊町に足を運んだ。日本記者クラブ取材団の一員として同原発構内の取材がほとんどだったが、バス越しに大熊町内の帰還困難区域をうかがうことができた。

 町内の家屋や店舗は激しい揺れにより被害が出た。建物の一部が崩れて家財道具や商品が散乱したが、住民らは片付ける間もなく原子力災害からの避難に追われた。事故発生からわずか半年で人家は荒れ、水田や畑が雑草に覆われた光景におののいた。イノシシのような野生動物が姿を見せ、わずかな時間で町が自然にのみ込まれつつあった。

 それから10年。家主が一時帰宅した形跡もなく、...