農産物や調味料など100品以上が並ぶ店内=安来市沢町、Dacha(ダーチャ)
農産物や調味料など100品以上が並ぶ店内=安来市沢町、Dacha(ダーチャ)

 新人記者2人が「体にも心にも優しいもの」を提供する店を紹介する「はるかほのやさしいお店巡り」、第9回はオーガニック食品や自然栽培の農産物を販売するDacha(ダーチャ)=安来市沢町=を紹介する。(Sデジ編集部・宍道香穂)


▷田園風景の中にアットホームな空間
 店舗は農村公園「出雲織 のき白鳥の里」内にある。一階建て約48㎡で、鮮やかな緑色の看板が目印。ポップなタッチで「Dacha」と書かれている。店内には農薬不使用の農産物や添加物をなるべく使用していない加工食品、調味料など100品以上が並ぶ。竹や綿などを用いたハンドメイド雑貨も販売している。
 売り場の横には和室があり、もの作り体験や楽器教室、絵画教室といったワークショップを開いている。店主の二瓶愛さん(41)の穏やかな雰囲気も相まって、地元の集会所のような居心地の良さを感じた。
 営業日は木~日曜日で、営業時間は午前11時~午後6時。月、水曜日にも営業することがある。詳しいスケジュールはインスタグラムで発信している。

 

▷体への思いやりを感じるラインナップ

 人気は米油(1,188円)、井上養鶏場(安来市赤江町)の鶏卵「まいたまご」(10個302円)など。玄米から作られる米油はほかの植物性油と比べ、添加物の少なさや栄養価の高さが特徴。抗酸化作用があるビタミンEが豊富に含まれ、美肌効果があるのもうれしい。油酔いしにくく、揚げ物に使うとカラッと仕上がる。
 二瓶さんの知人が生産する無農薬のレモン(1袋380円)はお薦めで、皮ごと食べられるのが魅力だという。二瓶さんは「はちみつに漬けたり、皮を削って肉に振りかけて焼いたりと、さまざまな方法で味わえます」と教えてくれた。

地元の農産物が並ぶコーナー

 大山産のタケノコイモや安来産の自然薯(ともに100g130円)のほか、森田醤油(奥出雲町三成)のしょうゆ(734円)や有機ポン酢(850円)、隠岐産のあらめ(464円)など、地元食材が多く並んでいる。だし粉末「山陰うまれの元気だし」(972円)は、イワシ、アジ、トビウオ、コンブと海の幸をふんだんに使用し、うま味も栄養もたっぷり。
 壁沿いの棚にはオーガニックのナッツやくるみ(量り売り、1g3円~)がかわいらしい瓶に入って並んでいる。栄養価が高く体に優しい食材がずらりと並び、お店の思いやりを感じた。

オーガニックのナッツやクルミ、ドライフルーツが瓶に入って並んでいる

▷「こんな店があれば」を形に
 福島県出身の二瓶さんは、2013年に島根県に移住した。店の周囲に広がる能義平野はコハクチョウの飛来地で「ハクチョウを間近で見られたり、雄大な平野や大山を楽しめたり、自然豊かな環境が気に入っています」と話す。

 安来での生活を続けるうち「体に優しい食料品を扱う店が近くにあれば」と思うようになった。松江市や米子市には自然食品の専門店があるが、近隣にはない。ならば自分が店を作ろうと、2020年11月、安来市農林振興課が所有する建物を借りて店を開いた。

緑色のかわいらしい看板が目印

 「子育て世代の人にも手に取ってもらえるように」と、価格設定に気を配っている。オーガニック食品や自然食品は価格が高く設定されていることが多く、「興味はあるが、価格が高くて継続的に購入できない」と、購入をあきらめる人が多い。体に良いものを少しでも長く食べ続けてもらえるようにと、「自分が購入できるかどうか」を基準に、お客さんが購入しやすい価格に設定している。
 地元住民からは「わざわざ市街地に行かなくても購入できて助かる」「こんなところにこんな店があったとは」と、喜びの声が多く寄せられているという。

店主の二瓶愛さん

 「地域の人々の交流を促進したい」と、食料品の販売にとどまらず、ワークショップやフリーマーケットを開き、地元住民の交流の拠点になっている。毎月開くフリーマーケットでは、食べ物や小物、衣類などを販売する約20店が集い、来場者でにぎわう。「大人も子どもも楽しめるように」と、店だけではなく、凧作りや木工体験といったワークショップも開いている。参加者からは「地元の人と交流する機会ができてうれしい」と感謝の言葉をかけられるという。

 二瓶さんはこれからも地域のコミュニティ作りに力を入れたいと話し、「地域の人がつながる、交差点のような場所を作りたい」と目標を掲げる。柔らかい物腰の中に地域への熱い思いがうかがわれ、頼もしく思った。