キッチンカーで各地を巡り、オリジナルコーヒーを販売する
キッチンカーで各地を巡り、オリジナルコーヒーを販売する

 新人記者2人が「体にも心にも優しいもの」を提供する店を紹介する「はるかほのやさしいお店巡り」、第8回はオリジナルのコーヒーを販売する「珈琲(コーヒー)香房(こうぼう)はぜ屋」(出雲市灘分町)を紹介する。(Sデジ編集部・宍道香穂)


▷自宅販売に加え、キッチンカーも
 自家焙煎のコーヒー豆を販売する「珈琲香房はぜ屋」は閑静な住宅街にあり、壁に描かれた「HAZEYA coffee beans」の文字が目印。コーヒーの香りを表す「香」を工房の「工」と入れ替えている点に、こだわりと遊び心を感じる。

 店の扉を開けると、店主の西尾厚さん(55)が出迎えてくれた。自宅の一部を販売スペースにし、15種類のコーヒー豆を並べている。店内にはコーヒーの良い香りが広がっている。奥には薪ストーブがあり、山小屋のような温かみのある雰囲気にホッとする。

 店舗販売のほか、12月中旬から自作のキッチンカーで平田エリアを中心に、出雲市、松江市などでドリップコーヒーを販売する。現在はプレオープンとして週に2回、水、金曜日に販売している。販売場所やスケジュールはインスタグラムで発信している。

 

▷試行錯誤がうかがえる商品名
 全15種類のうち、ブレンドコーヒー(さまざまな種類の豆を独自の配合で混ぜたコーヒー)が4種類、ストレートコーヒー(ブレンドしていないコーヒー)が11種類。ブレンドコーヒーは#135、#150といった数字が商品名になっている。西尾さんが豆の配合を試した回数を表し、例えば#135は135回目のブレンドで完成したコーヒーで、完成前に134通りの配合を試したことを意味する。

 「ストレートコーヒーだけでなく、ブレンドコーヒーも豊富に用意したい」との思いから、今でも試行錯誤を続け、新たなブレンドコーヒーを生み出し続けている。西尾さんは「コーヒーというと、苦いとか酸っぱいというイメージを持つ人が多い。甘みやコクのあるコーヒーもあると知ってもらいたい」と話し、とりわけ甘みを引き出すコーヒーづくりに力を入れる。

店内の棚には、かわいらしい瓶に入った15種類のコーヒーが並ぶ

 西尾さんから「どんな味が好きですか」と聞かれ、酸味や苦みが強いものよりもコクがあって飲みやすいものが好きだと伝えると、ブレンドコーヒーの150番(100g450円)を薦めてくれた。ペーパーフィルターの中に入れたコーヒーにお湯を注いだ瞬間、コーヒーのさわやか香りが立ち上ってきた。新鮮なコーヒーはお湯を注ぐと炭酸ガスが発生し泡が出てくる。ペーパーフィルターの中でプクプクと膨らむ様子が、はぜ屋のコーヒーの新鮮さを物語っていた。

 さわやかな香りが立ち上り、気分が一気にリラックスモードになる。一口飲むと、口の中に柔らかくまろやかな味が広がった。雑味がなく飲みやすいのもうれしい。優しく爽やかな後味が残るのも、こだわりのあるオリジナルコーヒーの魅力だと感じた。食後の一杯やホッと一息つきたい休憩時間のお供に良さそうだ。

テイクアウト用のコーヒーカップ。シュールでかわいいイラストは西尾さんがデザインした。

 苦みと酸味が特徴の139番(100g430円)、ガツンとした苦みを楽しめる133番(同440円)、あっさりと飲みやすい135番(420円)といったブレンドコーヒーのほか、「マンデリン スマトラタイガー」(670円)や「ルワンダ ムホンドオウンファーム」(490円)といったストレートコーヒーも用意している。

 はぜ屋では、生産国ではなく生産者や農園単位で一つの銘柄とする「シングルオリジン」のコーヒーを扱っている。店頭に並ぶコーヒー豆の瓶には、生産者の顔写真や農園の説明が書かれた紙が添えられている。西尾さんはコーヒー豆を卸売業者から購入しているため「現地に行けない分、生産者や農園のことを知り、顔の見えるコーヒーを販売するようにしています」と、こだわりを話した。

店主の西尾厚さん(55)

▷好奇心が高じて販売するまでに
 もともとコーヒーが好きだった西尾さんは、好奇心から独学で焙煎を学び始めた。やがて喫茶店を営む知人がコーヒー豆を購入してくれるようになり「より多くの人に自分が焙煎したコーヒーを飲んでもらいたい」との思いが芽生えた。
 2007年から出雲市斐川町直江でコーヒー豆の焙煎、販売を始めた。店舗の老朽化などにより店を閉めたが、今年4月、出雲市灘分町の自宅で再び販売を始めた。店を移転する前からの常連客の存在や「おいしいです」との声が励みになっているという。

 焙煎機は西尾さんが独自に作ったもので、コンロなどに置く「五徳(ごとく)」の上にザルで作った豆入れを乗せ、コーヒー豆をいる。
 コーヒーは豆の質や焙煎時間によって味が大きく変わるため、焙煎のたびにオリジナルの「焙煎ノート」に結果を記録している。ユーモアあふれる西尾さんのコーヒーに対するストイックな一面が見えた。

キッチンカーは、木材と淡い緑色の車体が目印。キャンピングカーの作り方を参考にしながら西尾さんが自作した。

 「より多くの人にコーヒーを届けたい」と、今後はキッチンカーでの販売を本格的に始める。ギャグを交えつつ、ほがらかに接客する西尾さんの姿が目に浮かび、これから街のあちこちで目にするのが楽しみになった。