スパイス販売のU-spice(ユースパイス)店内=出雲市多伎町久村
スパイス販売のU-spice(ユースパイス)店内=出雲市多伎町久村

 素材にこだわった「心身にやさしいもの」を提供する店を新人記者2人が紹介する「はるかほのやさしいお店巡り」。第4回は、出雲市多伎町久村のスパイス販売「U-spice(ユー・スパイス)」を紹介する。(Sデジ編集部・宍道香穂)


▷自宅リビングが店に変身
 店主の神田篤子さん(42)が毎週水曜日の午後1時半から同4時まで、自宅リビングでスパイスを販売し、週によっては土曜日も営業している。黒板型と木製、2種類のおしゃれな看板が置かれた玄関から室内に入ると、瓶に入ったスパイスがキッチン前のカウンターにずらり。赤や黄色、茶色とカラフルなスパイス60~70種類を販売している。
 店の人気商品はコリアンダー(10グラム20円)、ターメリック(10グラム15円)、クミン(10グラム20円)など、カレーの材料として代表的なスパイス。冬場はチャイに用いるシナモン(10グラム40円)がよく売れるという。

キッチン前のカウンターにスパイスの瓶がずらり

▷営業前の恒例 カレー教室
 スパイス販売のほか、水曜日の営業前にはスパイスカレーの作り方教室を開いている。毎回4~6人が参加し、神田さんが実演しながら作り方や調理のこつを学んでもらう。受講料は1回2,000~2,500円。スケジュールや残席数の確認、申し込みはインスタグラムでできる。
 オープン当初はスパイス販売だけをしていたが、スパイスカレーの調理法やスパイスの使い方について、店を訪れた人から質問されることが多かった。神田さんは「口頭での説明では伝えきれない部分が多く、実演を見てもらう方が分かりやすいと思ったのです」と、カレー教室を始めたきっかけを話す。

店主の神田篤子さん(42)

 教室ではチキン、シーフード、ココナッツなど週替わりでさまざまなカレーの作り方を教えるほか、アレンジ方法やスパイスの使い方、配分による味の変化も説明している。参加者たちは次々と質問し、メモを取りながら熱心に学んでいた。

▷教室の後は全員で会食
 実演の後は全員で、作ったカレーを食べる。参加者たちがカウンターを囲むように座ってカレーを食べながら、日々の出来事を楽しそうに語り合っていて、カレー教室が交流の場にもなっているのだと感じた。子育ての合間に参加する人が多いが、友人同士や夫婦連れで参加する人もいるという。
 この日の教室で作った「キーマカレー」を一緒に食べさせてもらった。挽肉やタマネギに加え、カルダモンやクローブ、シナモン、クミンなど10種類ものスパイスが入っていて、おいしそうな香りが食欲をそそる。型を使ってご飯とキーマカレーをそれぞれ円形に盛り付け、赤タマネギときゅうりのクスンブリ(南インドのサラダ)、ゆで卵を乗せると、見た目も華やかだ。スパイスがしっかりと効いたルーは香りと独特の味で空腹を刺激してくる。ご飯や付け合わせのサラダとの相性もぴったりだ。ボリュームがあったが、あっという間に完食してしまった。

華やかな盛り付けのキーマカレー

▷コロナ禍をきっかけに開店
 神田さんは普段、カフェの店員として働いている。昨年、新型コロナウイルスの流行に伴って勤務する店が一時、休業となってしまった。自由に使える時間が増えたため、何かできないかと、スパイスに注目した。
 夫と共通の趣味で頻繁にスパイスカレーを作っていたが、近隣にはスパイスを専門で取り扱う店がなく、使用するスパイスはネットで購入することが多かった。
 神田さんは「代表的なスパイスはスーパーで購入できますが、ネットでしか購入できないものも多く、スパイスの専門店があれば…と感じていました。せっかく時間ができたし、自分たちでやってみようと店を開きました」と話した。
 独学でスパイスについて学びながら、数ヶ月間の準備を経て昨年7月5日に店を開いた。神田さんは「細かいことは考えずに勢いでスタートしたので、お客さんの声を聞きながら試行錯誤して、今のスタイルに落ち着きました」と振り返る。

玄関先のかわいらしい看板が目印

 単品のスパイスだけを販売していたが「カレーを作るためのスパイスのセットがほしい」との声に応え、チキンカレー、ココナッツカレーなどが作れるスパイスのセット販売を始めた。カレー教室も「作り方を詳しく知りたい」との要望に応えるためにスタートした。神田さんは「これがほしい、こうしてほしいという声が聞けるのがありがたいです。これからも販売、教室を通して、スパイスカレーを身近に感じてもらえたら」と、感謝の気持ちを忘れない。

 スパイスを買いに来る人やカレー教室の生徒からの質問に丁寧に答え、スパイスのことなら何でも知っていそうな神田さんだが、「まだまだ勉強中です」と謙虚な姿勢。優しげで、ふんわりとかわいらしい雰囲気をまとう神田さんだが、ひたむきにスパイスを愛し、店を訪れる人の要望に細やかに対応する真心と真面目さを感じた。