国会の怠慢と言うほかない。「永田町の常識は、世間の非常識」と非難されても当然ではないのか。

 岸田政権初の本格論戦となった臨時国会は、新型コロナウイルス対策や超大型の経済対策を盛り込んだ約36兆円に上る過去最大の2021年度補正予算を成立させ、閉幕した。その一方で、国会議員の文書通信交通滞在費の改革が置き去りにされた。

 文通費は歳費(給与)とは別に国会議員に対し、毎月100万円が支給され、非課税で領収書添付や使途の公開の必要はなく、「第二の歳費」とも呼ばれる。10月31日の衆院選で当選した日本維新の会の新人議員が、10月分を満額受け取る制度はおかしい、と提起。与野党とも問題意識を共有したはずだった。

 各党は日割り支給へ改めることでは一致、立憲民主党や維新の会など野党が透明性を確保するため、使途の公開や国庫返納を可能とする歳費法改正案を提出した。ところが、自民党が難色を示し、手を付けぬまま、国会は幕を閉じた。

 一義的な責任は与党にある。岸田文雄首相(自民党総裁)は総裁選で、大掛かりな選挙違反事件などを踏まえ、政治とカネについて「国民の皆さまに丁寧に説明し、透明性を確保」と掲げたはずだ。だが、この間「各党各会派が合意を得る努力を重ねる必要がある」と繰り返すだけで指導力を発揮することはなかった。

 与党の執行部は、日割り支給を先行して法改正し、使途公開については与野党で協議を継続することを会期末ぎりぎりになって提案したが、抜本改革を求める野党側との話し合いは物別れ。連立を組む公明党も、自民党を説得しようとした形跡はほとんどなく、与党側の改革への本気度は疑わしい。議員の待遇にかかわる問題なのだから、各党の協議が難航しているならば、議長や議院運営委員長が率先して指揮に当たるべきだろう。

 民間企業などでは業務に関する交通費や通信費など経費は、領収書を添付して精算するのが当たり前だ。地方議員の文通費に相当する政務活動費は全国47都道府県、20政令指定都市、62中核市の議会の全てが領収書を公開、うち6割超はインターネットでも閲覧できるようになっている。

 国会議員がそれをできない理由はどこにもない。にもかかわらず、及び腰なのは、後ろめたい支出に充てているからだ、と勘ぐられても仕方あるまい。財源は国民が納めた税金であり、「つかみ金」は許されない。国民の常識との乖離(かいり)を自覚しているのだろうか。

 見逃せないのは、今回の一件が野党の初当選議員による”告発”がきっかけとなった点だ。疑問を抱いていても黙認してきたならば、「国会議員ボケ」である。自身の問題に迅速に対応できないような言論の府の姿は嘆かわしい。

 今国会中には、石原伸晃元自民党幹事長や大岡敏孝環境副大臣の政党支部がコロナ禍で休業などを余儀なくされた事業者らに支給される助成金を受け取っていたことが発覚した。

 言うまでもなく政治とカネを巡る問題で何よりも肝心なことは透明性の確保。そして税金の使い道に対して、もっと敏感になる必要がある。年明けの通常国会の冒頭で野党案を成立させる。それが国会議員の使命だ。