課題「歌」 西基宜選

 ▽特 選

生き来しか生かされ来しか八十路なる吾に自祝の一首を歌ふ 出 雲 奥井 紘子

 【評】よくぞ難事を凌いできたとも、天恩や人の寛容に生かされてこそとも思われて、今在る自分を寿ぐ気持ちで詠まれた。歌に滲む敬虔な気持ちを感得し、選ばせていただきました。

 ▽入 選

吹く風に葉を揺らしては歌う木々誘われるまま踊りだそうか 松 江 宮本朝陽香

遺されし母の筆跡メモにあり生活の短歌(うた)走り書きされ    大 田 永野砂由美

流れくる十八番(おはこ)演歌にリハビリの麻痺の老いの手かすか膝うつ   出 雲 加田 哲也

都への尽きぬ想ひを言の葉に託す後鳥羽の「遠島百首」  隠岐の島 平山  明

流れ出る昭和歌謡を口ずさみありのままゐる安けさを知る  浜 田 横山美恵子

船頭の歌声わたる川の面を吃水(きっすい)深くどんこ舟ゆく      江 津 山根 喜代

詠む歌は人生のその時々のページを開く栞とな...