ことしの日本経済は、ワクチン接種などにより新型コロナウイルスの感染が落ち着けば、ある程度しっかりした景気回復を期待できるだろう。一方で食品をはじめとする物価上昇や、米中など海外経済の動向が懸念材料だ。鍵を握るのは賃上げで、春闘と岸田政権の政策対応が焦点となる。

 政府は2022年度について実質3・2%の経済成長を見込んでいる。21年度はコロナの緊急事態宣言などで経済活動が制約されたため、2・6%にとどまると予測。しかし昨秋以降、感染が抑えられ個人消費が持ち直したほか、年末に成立した過去最大の補正予算の効果などで、22年度は着実な景気回復のシナリオを描く。

 主な国際機関も同様で経済協力開発機構(OECD)が昨年12月に発表した実質成長率見通しは、日本について21年の1・8%が、22年は3・4%へ高まると予測した。

 新変異株「オミクロン株」の影響など感染状況の不確実性は残るものの、これまでより明るい日本経済の姿を期待できる点は喜ばしい。

 この2年間を振り返ると結局、感染抑制が最も効果的な景気対策である点がはっきりした。ワクチン接種の効果は大きく、今後本格化する3回目において、政府と自治体は供給面などに万全の態勢を敷いてもらいたい。

 明るさを展望できることしの日本経済だが、懸念材料は少なくない。まず物価の上昇だ。

 昨年は、日本に先んじた米中などの景気拡大で需要が急増した結果、エネルギーや食料、半導体に輸送費まで幅広いモノとサービスが高騰。国内でもガソリンや灯油のほか、食品の値上げが相次ぐ事態となった。

 総じて見れば日本の物価上昇率はなお限定的だが、これは昨春あった携帯通信料金の値下げが全体を押し下げる特殊要因のためだ。今春以降この影響がなくなるため、情勢次第では前年比で1%を超えて物価が上がることもあり得よう。

 コスト増による「悪い物価上昇」は家計を圧迫して消費を減退させるだけでなく、販売価格に転嫁できなければ企業収益も低下が避けられない。景気の重荷となるリスクに十分留意すべきだ。

 世界的なインフレ傾向は、海外経済の成長鈍化を通じて日本経済の足を引っ張る恐れがある。ことしの米欧は、インフレ圧力の高まりを受けて金融政策が引き締め方向に動くとみられる。景気拡大と釣り合えば問題ないが、物価高が止まらず引き締めが行き過ぎるようだと、景気の腰を折る可能性があろう。

 海外の主要経済圏におけるコロナの感染動向と併せて、中央銀行のかじ取りを注視したい。

 これら懸念要素が景気に大きな影響を及ぼすかどうかは、賃上げの動向にかかっている。物価が上がっても、それに見合う所得増があれば悪影響を抑えられるからだ。

 まず重要なのが春闘だ。機械や素材関連など好業績が予想される企業には、従業員への納得のいく報酬増を求めたい。

 その上で、岸田文雄首相は「成長と分配の好循環」の実現へ次の一手を打つべきだ。

 企業を対象にした賃上げ減税や介護職などの収入の拡充を昨年は決めたが、まだ緒に就いたばかりである。企業の利益を株主還元から人材投資へ転換させる政策が、いまこそ望まれる。