新型コロナウイルスと東京五輪・パラリンピックの話題に終始した2021年が幕を閉じ、新しい年を迎えた。とはいえ、新たな変異株「オミクロン株」の感染者が世界で急増。国内でも市中感染が広がっており、コロナ禍は続きそうだ。だからこそ今年を、コロナ禍を乗り越えて新たなスタートを切る、希望にあふれる年にしたい。
コロナ禍で加速した「地方回帰」の流れは鈍化しているように映る。21年度上半期(4~9月)の島根県内へのU・Iターン者数は1539人で、前年度から62人減少した。コロナ流行の第4、5波の時期と重なり、人の移動が抑制されたのが一因とみられる。
それでも、東京一極集中を解消する好機であるのは間違いない。総務省の人口移動報告によると、東京都では昨年11月まで7カ月連続で転出者が転入者を上回る「転出超過」になった。本社機能や一部の業務を地方に移す企業も増え、地方移住への関心は続いている。
山陰で暮らす私たち自身が、コロナ禍を機に仕事のやり方や時間の使い方を見直し、より豊かな生活を送ることが、地域の魅力向上、そして都市部から移住者を呼び込む流れにつながるだろう。
コロナ禍を乗り越えるには何が必要か-。そのキーワードとして「時代への順応」を挙げたい。都市部では「冷凍食品専用スーパー」が注目を集めているという。コロナ禍で外食の機会が減り、家庭で冷凍食品の需要が増えているのが要因。細胞を壊さない冷凍技術を取り入れている上に、産地でしか食べられない新鮮な食材や有名シェフの料理なども販売し、商機を広げている。時代を見据えた迅速、かつ柔軟な対応が「ウィズコロナ時代」を勝ち抜く一手になるだろう。
時代への順応という面では、地球温暖化対策の柱を担う「脱炭素社会」時代に向けた対応も求められている。既に山陰両県でも、松江市ガス局と出雲ガスが二酸化炭素(CO2)排出量が実質ゼロのカーボンニュートラルLNG(液化天然ガス)の使用を開始。また、日本製紙江津工場は電気自動車の普及に向けた国内外の需要増を取り込もうと、リチウムイオン電池の素材などに使われるカルボキシメチルセルロースの製造プラントを増設するなど、積極的な動きが見えている。
一方で、同じエネルギー政策でも、今年は中国電力島根原発2号機(松江市鹿島町片句)の再稼働の可否判断を迫られる節目を迎える。稼働していない現状で電力は安定供給されており、「原発は本当に必要か」と疑問を持つ人も多いだろう。
脱炭素社会に向け、発電時にCO2を排出しない原発が一定の役割を果たすのは確かだ。しかし、事故発生時の「広域避難」の実効性を踏まえた安全性の担保や、原発から排出される高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定問題をはじめ、課題は山積している。可否判断に向けては、これらの解消策を吟味した上での十分な議論が欠かせない。
今夏は参院選が待ち構える。昨年10月に衆院選が行われたとはいえ、その直前に就任した岸田文雄首相にとっては、政権運営を初めて評価される国政選挙になる。オミクロン株の感染拡大をどこまで抑えられるのか、ウィズコロナ社会をどう描くのかを、じっくりと見極めたい。