自作したかるたを持つ中村勇斗君=松江市殿町、松江歴史館
自作したかるたを持つ中村勇斗君=松江市殿町、松江歴史館

 島根大学付属義務教育学校2年の中村勇斗(はやと)君(8)が昨年、夏休みの自由研究として「日本100名城」のかるたを作った。中村君は城が好きで、かるたの絵札、読み札ともに工夫が詰まった力作。松江市殿町の松江歴史館で展示されている。かるた制作の面白さや城の魅力について聞いた。(Sデジ編集部・宍道香穂)

 「日本100名城」は公益財団法人日本城郭(じょうかく)協会が2006年に発表した。世界遺産の姫路城(兵庫県姫路市)をはじめ、国宝の松江城(松江市殿町)、彦根城(滋賀県彦根市)、首里城(那覇市)など歴史的、文化的価値が高い100の城を選定した。中村君はその中から52の城を選び、豆知識を盛り込んだ読み札と絵札とのセットで説明している。

 中村君のお気に入りは、熊本城の札。畳の下に非常食のかんぴょうが隠されていた熊本城について「熊本城 食べれる城だよ ひみつだよ」と、かわいらしい読み札で説明している。絵札には本丸と石垣に加え、イチョウの葉と銀杏(ぎんなん)を描き、本丸に大きなイチョウの木があることを表現した。

お気に入りという熊本城の札を含む10組

 また、静岡市にあった駿府(すんぷ)城については「駿府城 人質の家康 住んでたよ」の読み札を作った。徳川家康が今川義元の人質として駿府城で過ごしたことを説明し、絵札には家康と義元の顔を描いた。

 52組、計104枚の札で、建物や石垣の特徴、ゆかりの人物、出来事をわかりやすく紹介している。表現力の高さを感じると同時に、一つ一つの城について丹念に調べ、豊富な知識を持っていることが分かる。

松江城の札を含む7組。豆知識をクイズ形式で紹介している。

 地元・松江城の札は天守の写真の横にハートマークを描いた。ハート型の石垣があることを表現し、「ん~最高! 何度も行きたい 松江城」との読み札を作った。松江城について「何回行っても新たな発見があって楽しい」と話し、城が大好きで、城の細部まで鑑賞を楽しんでいるのだと感じた。

▷お気に入りを集めた「お城ランキング」も
 かるたのほかに「ぼくが選んだお城ランキング」のパネルも作った。中村君は日本各地、80以上の城へ足を運び、特に気に入っている5つの城を紹介している。

 1位は松山市の伊予松山城。天守のほか多くの櫓(やぐら)が現存しているのが珍しく、夜は美しい夜景が楽しめる。

伊予松山城の天守

 2位は那覇市の首里城。首里城は2019年10月、火災で正殿などが消失したが、中村君は同年3月に訪れ、焼ける前の首里城を見ることができた。日本、中国、琉球の建築様式が入り交じった独特の作りと、鮮やかな赤色が印象的という。かるたでは、本殿を描いた絵札と「首里城の 本殿復元 待ってるよ」の読み札とで、復興を願う気持ちを込めた。

焼失前の首里城正殿

 3位は石垣のそりが美しい萩城(山口県萩市)。4位が備中高松城(高松市)、5位が竹田城(兵庫県朝来市)と続くが、最近、新たに姫路城(兵庫県姫路市)がお気に入りに加わったという。中村君の最新の「お城ランキング」では姫路城が1位となり、これまで1位だった伊予松山城は2位となった。

お気に入りの城を紹介するパネル

 中村君は姫路城について「昨年12月に現地を訪れて感動した。一つ一つの建物がきれいだった」と話す。姫路城は白い瓦が特徴的で「白鷺城」とも呼ばれるが「近くで見ると思いのほか、白い塗装がはげた部分が多いと分かった」と、興味深そうに教えてくれた。

世界遺産の国宝・姫路城=兵庫県姫路市(共同通信社ヘリから)

 これまでに訪れた島根県内の城を記したマップも作成し、国宝松江城のほか、国史跡の津和野城(島根県津和野町後田)や県史跡の浜田城(浜田市殿町)など41城の場所を地図に記した。

 中村君は夏休みの自由研究としてかるた制作に取りかかり、日本100名城を紹介した本など、自宅にある約20冊を参考にし、約2週間かけて仕上げた。「絵を描くのが難しかった。所々に写真を貼り付けながら完成させた」と振り返るが、それぞれの天守や石垣の特徴をうまく捉え、迫力を感じる見事な絵札だ。夏休みの自由課題は夏休み終盤に慌てて取りかかり、なんとか完成させる人もいれば、コツコツと準備してクラスメートがあっと驚くような作品を提出する人もいる。中村君の作品には学校の皆もびっくりしたことだろう。

かるたについて説明する中村君

 多くの人に見てもらいたいと、父の健吾さん(38)と11月、かるたを松江歴史館へ持ち込んだ。スタッフによる協議の結果、館内で展示が決まった。作品を見たスタッフは「すばらしい」「小学校2年生が作ったとは思えない」と、完成度の高さに驚く声が上がった。松江歴史館を管理する株式会社さんびる(松江市乃白町)の平井利和さんは「歴史に興味を持ち、熱心に研究しているお子さんが地元にいるというのは素晴らしいこと。ぜひ多くの人に見てもらいたい」と話した。

▷大河ドラマをきっかけに城に興味
 中村君は「6歳の時に大河ドラマを見て、戦国武将や、彼らが築いた城に興味を持った」のが、城を好きになったきっかけだという。人生で初めて訪れた城は、戦国大名・毛利元就が築いた吉田郡山城跡(広島県安芸高田市)。標高390mの郡山に築城され、眼下に広がる吉田盆地を見渡すことができる。

 中村君は「それぞれの城に武将の思いが詰まっているのが面白い」と城の魅力を説明し、吉田郡山城について「城の周囲に家臣の家が集まっていて、元就が家臣に優しい武将だったことが分かる」と教えてくれた。当時、家臣の住居は城がある山の麓(ふもと)に作られるのが一般的で、家臣を城の近くに住ませることは珍しかったという。

 今後行ってみたい城はどこか尋ねると「高知城。本丸が全て残っていることや、天守と御殿が1カ所にそろっているのが珍しい。城のほかにも桂浜など歴史を感じられる場所がたくさんあり、楽しそう」と次の目標を掲げる。

 中村君は「次は割り箸で松江城の模型を作ってみたい」と、新しい制作活動への意欲を見せた。構造や大きさのバランスを捉えるのが難しいものの、いつか完成させたいとのこと。城の細部まで観察し、忠実に再現された「割り箸松江城」を制作する中村君の姿が目に浮かぶ。完成が楽しみだ。

 かるたの展示は2月27日まで。