4月のグランドオープンに向け、有福温泉(江津市有福温泉町)の大規模再生プロジェクトが進んでいる。温泉の湯や食事だけでなく、山里での体験を通じ、知る喜びや学ぶ楽しさに触れる「旅育」の拠点に変貌させる。温泉街の人口減少と高齢化は著しく、持続的な成長にはU・Iターン者ら外部人材を呼び込むことが鍵になる。

▼滞在型観光に転換
 「学びの集落を目指す」。地元の旅館や飲食店などでつくる有福温泉振興会の川中英章会長(60)が新生・有福のコンセプトをこう言い表した。

 団体から個人客へのニーズの変化や自然災害、旅館火災で、入り込み客数はピークだった2000年の14万3千人が20年には3万3千人に落ち込み、20軒あった旅館は3軒となった。

 1300年超の歴史ある温泉を絶やすまいと、官民連携の再生事業が21年夏に始動した。観光庁の補助金など約6億円で、廃業した旅館3棟をゲストハウスや露天風呂付き旅館、カフェに改修し、既存3旅館も内外装を一新。一連のハード整備とともに、旅育の拠点をアピールし滞在型観光地に転換する構想だ。川中会長は「温泉と学びを融合し、新たな旅先に選んでもらう」と力説する。

 幼児教育事業を手掛けるしちだ・教育研究所(江津町)、自然教育の保育施設を運営するNPO法人里山子ども園わたぼうし(跡市町)など市内事業者が地元食材の料理や森林散策、ものづくりや農作業の体験プログラムを検討する。地域の人とふれ合いながら子どもたちの五感を刺激し、親子がゆったり向き合い、絆を育む場も提供する。

 旅行業界のシンクタンク、公益財団法人日本交通公社の五木田玲子企画室長は「体験型旅行は全国で競合が激化するが、地域特性を明確に打ち出せれば、ニーズは着実に広がるはずだ」と見通した。

▼活力維持が不可欠
 目指すコンセプトが固まり、ハード整備が着々と進む一方で、...