東京電力福島第1原発事故から5日目の2011年3月15日未明、漆黒の闇に包まれた首相官邸には沈痛な空気が流れていた。焦眉の急が迫る2号機の炉心は溶融が進み、原子炉の破損による放射性物質の大量拡散も懸念された。また、東電社長の清水正孝から連絡を受けた閣僚は「東電が現場撤退を考えている」と受け止め、最大の窮地を迎えていた。

 「2号機はまさに綱渡りの状態...