鳥取県大山町の大山(1729メートル)と鳥取、兵庫両県にまたがる氷ノ山(1510メートル)で山岳遭難が相次ぎ、大山では死者が出た。事故を繰り返さないためにも、冬山登山に必要な事前の備えや心構えは何なのか。鳥取県山岳・スポーツクライミング協会で遭難対策委員長を務める神庭進さん(44)=鳥取県伯耆町荘=に聞いた。(米子総局報道部・柴田広大)
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まずは天候が大切だ。テレビやインターネットの情報で天候の変化を見極める。寒冷前線が通過する時は劇的に悪天候になるため注意が必要という。
次に装備。滑落しないようアイゼンやピッケルを用意し、速乾性のある肌着とアウターを身に着ける。ふぶいた時のためにゴーグルや目出し帽、万が一動けなくなった時に備えて十分な防寒着を携える。水や火を使わない非常食、簡易テント「ツェルト」も欠かせない。装備や服装は、登山前に必ず使い方を確かめておくこと。
入山する際はできる限り複数で、初心者は経験者と登山する。登山届を出し、午前8時までに出発し、昼には下山できるよう、行動する。想定外の事態が発生しても明るいうちなら対応しやすいからだ。
登山中は「引き返す時間を常に頭に入れて登ってほしい」という。時間を考えず山頂を目指すのは危険なため、事前に引き返すタイミングを決めておくこと。
入念に準備をして臨んだ登山でも万が一の遭難もあり得る。まずは110番すること。風を避けられる場所に移動してツェルトを立て、風と雪を防いでその場で動かず待機する。救助隊が見つけやすいよう発信器を備えておくとなお良い。

専用のスマートフォンアプリや衛星利用測位システム(GPS)を活用すると、捜索隊からも位置情報を確認でき、救助に役立つという。
神庭さんは「冬山は想定外のことが起こるという前提で対策してほしい」と装備や天候、通信機器など十分な準備を呼び掛ける。