政府は13都県に適用している新型コロナウイルスのまん延防止等重点措置を延長し、高知県を対象に追加すると決めた。

 オミクロン株による現下の「第6波」は、感染拡大の中心が若者世代から子ども、高齢者に移っている。このままでは家庭を介した感染者や濃厚接触者が絶えず、重症化リスクの高い高齢者で入院病床が逼迫(ひっぱく)する。自宅待機を余儀なくされる人々の続出により社会経済活動もまひしかねない。

 喫緊の課題は、休校、休園が増えた学校や保育所でのクラスター(感染者集団)防止の強化だ。政府はコロナ対策の重点を従来の飲食店などから子どもが集う場へと移すべき局面だ。

 全国知事会は、クラスター発生の中心が飲食店から学校や保育所に替わったとして政府のコロナ対策の「基本的対処方針」は実態とずれていると声を上げた。子どもの絡む感染を減らすことが高齢者、さらには全体の感染拡大防止につながるという指摘は的確だろう。

 2月初めまでの1週間の年代別新規感染者を見ると、外での飲食機会が少ない10代以下が全体の3割近くを占める。家庭で大人から感染した子どもが学校などで周りにうつすケースが多発していると見るべきだ。

 1月下旬の時点で休校した公立の小中高校と幼稚園などは全国約3万5千校の約3%に当たる1114校。2月初めに全面休園していた認可保育所や認定こども園は少なくとも43都道府県の777カ所に上った。なるべく休校、休園を避ける政府方針にかかわらず、こうなった現状は深刻だ。

 ならば子どもの感染対策は何をすべきか。残念ながら大人がやっていること以外に特別な案はなく、むしろ困難が多い。保育園児のマスク着用は「可能な範囲」の一時的推奨にとどめざるを得ず、2歳未満には推奨しない。5~11歳の子どもへのワクチン接種が始まるのは3月以降。保育所などでは「3密回避」にそもそも限界がある。

 そして学校や保育所で感染者が出れば、地域への拡大を止めるため自治体の判断で休校、休園とするのもやむを得まい。

 そうなると、経済社会を回す上で学校や保育所が担ってきた公共機能が失われることの影響が大きくなる。子どもの世話のため親が仕事を休まざるを得なくなり、経済活動が停滞し、家計収入が減って困窮する世帯が増える。居場所を失う子どもたちの心身の発育に支障が出ないかも心配だ。

 政府は、子どもの休校や休園で保護者が仕事を休んだ際に、給与を補償する助成金を受け取りやすくし、保育所が休園になった子どもを公民館などで預かる「代替保育」を促進する自治体への財政支援を打ち出した。こうした措置を充実させ、子育て世帯を支えたい。

 これ以上の感染拡大を止めて高齢者らの命を守ることを最優先するなら、学びや保育の場は閉じるべきなのか。それとも経済活動維持のため継続が正しいのか。これは二者択一すべき問題ではない。ジレンマを抱えながらも両者の間で最適解を探るほかあるまい。

 岸田文雄首相はワクチン3回目接種を巡り2月後半に1日100万回にペースを上げる目標を示した。間もなく人生の節目となる卒業、入学シーズンがやって来る。現状で取り得る感染対策を総動員し、子どもたちに明るい春を迎えさせたい。